入金や出金をしないで長期間放置したままの睡眠口座(または休眠口座)。遺産相続では、相続人が手続きをしなかったために大切な預金が睡眠口座になるケースがみられます。また、故人が預金を放置していて、相続するときにすでに睡眠口座になっているケースもあります。そこで睡眠口座を相続したときの対処法や、大切な預金を睡眠口座にしないための方法を見ていきましょう。

「睡眠口座」は引き出すことができる

ほとんどの人は銀行に預金口座を持っていて、使いみちに応じて口座を複数持っている人も少なくありません。

 

これらの口座のうち入出金をしないで長期間放置している口座があれば、睡眠口座(休眠口座)となる可能性が高くなります。

 

睡眠口座となった場合も預金を引き出すことができます。一部の例外はありますが、没収されることはないので安心してください。睡眠口座が故人のものであっても、相続人が手続きをすれば引き出すことができます。

 

■10年間利用がなければ睡眠口座になる

一般的に、最後に入金または出金をしてから10年以上利用されていない預金口座は睡眠口座となります。利息が付いただけでは入金とはみなされません。

 

睡眠口座となった場合も預金を引き出すことができますが、キャッシュカードでATMから引き出すといった通常の取引はできません。通帳や印鑑の確認など、窓口で所定の手続きをする必要があります。

 

10年より短い期間で取引停止・手数料が生じるケース

預金口座が睡眠口座になる基準は金融機関によって異なり、10年より短い期間で取引停止や手数料が生じる場合もあります。

 

●三井住友銀行

残高が1,000円未満の口座は5年以内に利息以外の入出金がなければ取引停止となり、取引の再開や引き出しには手続きが必要。

 

●りそな銀行

2年以上一度も入出金がない口座を未利用口座として、残高が1万円未満の場合は約3か月後に未利用口座管理手数料(年間1,320円(税込))を引き落とし。残高が0になった時点で自動解約。

 

民法では債権の消滅時効が5年と定められていますが、実際に金融機関が消滅時効を適用して預金を消滅させることはありません。

 

ただし、郵政民営化前に預け入れた郵便貯金は、長期間取引がないと旧郵便貯金法の規定により引き出しができなくなる場合があります。

 

郵政民営化前に預け入れた郵便貯金の取り扱い

●定額郵便貯金・定期郵便貯金・積立郵便貯金

満期後20年2か月を経過してもなお払戻請求がない場合は、引き出しができなくなる。

 

●通常郵便貯金・通常貯蓄貯金:

2007年9月30日の時点ですでに最後の取引から20年2か月を経過している場合は、引き出しができない。

 

詳しくはゆうちょ銀行のホームページで確認してください。

 

 

■睡眠口座を民間公益活動に活用する制度がスタート

2018年1月に施行された「休眠預金等活用法(民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律)」では、睡眠口座の資金が民間の公益活動に活用されることになりました。

 

休眠預金等活用法では、2009年1月以降に最終の取引(異動)があって10年以上取引がない預金を「休眠預金」と定めています。

 

財形貯蓄、マル優口座、外貨預金、郵政民営化前の郵便定額貯金などは、この制度の対象ではありません。また、2008年12月以前に最終の取引があった睡眠口座も対象外です。

 

次のいずれかにあてはまる休眠預金は、預金保険機構に移管された上で民間の公益活動に活用されます。

 

・残高が1万円未満の口座

・残高が1万円以上の口座で住所変更などによって金融機関からの通知が預金の名義人に届かなかった場合

 

ただし、休眠預金となった場合も金融機関を通じて引き出すことができます。休眠預金はすべてが活用されるわけではなく、引き出しに備えて一定部分は準備金として積み立てられます。

 

休眠預金等活用法が施行される頃には「預金が没収されるのではないか」という誤解もありましたが、休眠預金が没収されることはありません。

 

■現存しない銀行の通帳・キャッシュカードが出てきたら?

自宅から古い通帳やキャッシュカードが出てきた場合、その銀行が現存しない場合も少なくありません。

 

日本の金融機関は、何回か合併を繰り返して現在の姿になっています。現存しない銀行の預金口座は合併先の銀行が引き継いでいます。どの銀行に引き継がれたかを確認して、引き継ぎ先の銀行の近くの支店に問い合わせてみるとよいでしょう。

 

参考として、2020年5月現在の三大メガバンクの前身となる銀行名(平成以降のもの)をご紹介します。

 

[図表]三大メガバンクの前身となる銀行名(平成以降のもの)

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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