睡眠口座であっても相続税評価の対象になる
故人の財産は睡眠口座であっても相続の対象になり、相続税の課税対象になります。漏れがないように相続手続きや相続税の申告をしなければなりません。
■睡眠口座がないかどうかを確認する
遺産の相続では、まず、故人にどれぐらい財産があったかを調べます。このとき、睡眠口座ももれなく見つけ出す必要があります。
故人が遺言書や財産目録を残していたとしても、睡眠口座がないとは限りません。睡眠口座は本人ですらその存在を忘れている場合があるからです。
故人の睡眠口座は、次のようなものを手がかりに探してみるとよいでしょう。
・預金通帳やキャッシュカード
・ネット取引でパスワードを生成する端末(トークン)
・銀行からの郵便物、ポケットティッシュやボールペンなどの粗品
睡眠口座があることがわかれば、預金の相続手続きをします。相続手続きでは、遺言書または遺産分割協議書のほか、戸籍謄本(故人の出生から死亡までの戸籍謄本と、相続人の現在の戸籍謄本)などが必要です。
■睡眠口座の相続税評価額
相続した睡眠口座は相続税の課税対象になります。睡眠口座以外の財産も含めた遺産総額が基礎控除額(※)を超える場合は、相続税の申告・納税が必要です。
(※)相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で求められます。
相続税を申告するときの睡眠口座の相続税評価額は、以下のように通常の預金と同じ方法で求めます。
・普通預金・通常郵便貯金
故人の死亡日の預金残高で評価
・定期預金・定期郵便貯金・定額郵便貯金
預入残高と故人の死亡日に解約した場合の税引き後の利息の合計額で評価
利息の金額は、金融機関に利息計算書を発行してもらうか、残高証明書に既経過利息を記載してもらうことで確認できます。
大切な預金を睡眠口座にしないためには
大切な預金を睡眠口座にしないためには、日ごろから預金口座を管理しておき、住所・氏名・電話番号が変わった場合は速やかに変更手続きをしましょう。
長期間取引がなく、今後も取引をする予定がない預金口座は解約することをおすすめします。遠方の銀行で近くに支店がない場合は、郵送で手続きができる場合もあります。
故人から相続した預金は、少額であれば放置してしまうことも多いかもしれません。時間が経てば睡眠口座になってしまうため、できるだけ早く相続の手続きをしましょう。
休眠預金等活用法では、最終の取引から9年~10年6か月を経過したときに、金融機関から名義人に通知することが定められています。通知があれば口座を解約するか、再び利用するなどしましょう。なお、残高が1万円未満であれば通知はありません。
睡眠口座の調査を専門家に任せることも可能
睡眠口座は、引き続き預け入れ先の金融機関から引き出すことができますが、引き出しの手続きは通常の預金に比べて手間がかかります。もしこの記事を読んでいる方ご自身が取引のない預金口座をお持ちなのであれば、睡眠口座になる前に解約しておくことをおすすめします。
現在ご相続が発生していて、故人が睡眠口座を持っている、もしくは持っている可能性があるという場合にはここまで解説してきた通りの方法で有無を確認する必要があります。手続きの手間をかけたくない場合や時間が取れないという場合には、司法書士などの専門家に依頼することもできるので検討すると良いでしょう。
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