55歳になると定年が見えてきます。この時期に、老後の支出を洗い出しておきましょう。数字にして改めて眺めてみると、意外と無駄が多いことに気づくはず。最も大きな支出となりそうな「住居費と生命保険」についてスリム化する方法を紹介します。※本連載は、長尾義弘氏、中島典子氏の共著『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

定年前に解約すべき保険・すべきでない保険を見極める

今度は保険の見直しです。貯蓄型の保険は資産であると同時に、支出でもあります。資産となる保険金を受け取るためには、保険料を払わなければならないのです。

 

まずはどんな保険に加入しているかを洗い出し、それぞれについて払っている保険料をチェックします。口座引き落としだと無頓着になりがちですが、家計に占める保険料の割合はけっこう大きいことに気づくでしょう。

 

保険を見直す際には保険料と保障内容の両方に注目します。

 

会社員なら、団体加入の保険に入っている人も多いと思います。団体で加入する保険は生命保険に比べて保険料が安い場合もあります。しかし、保障内容や契約内容は会社によってまちまちです。その保障は定年で終了するのか、継続できるのか。また、家族の保障はどうなるのか。こういった詳細は会社に確認してください。

 

すでに子どもが独立した、あるいは独立間近なら、もうそれほど大きな保障は必要ないでしょう。高額な保障がついた定期保険は解約してもいい時期かもしれません。まったく保障がなくなるのは不安だというのであれば、保障の減額も有効です。

 

逆に、解約してはいけない保険も存在します。以前に入ったまま契約が続いている生命保険は、定期保険付終身保険の可能性があります。これは10年以上前、大手保険会社の主力商品でした。

 

この保険の終身部分だけは予定利率がよく、いまや「お宝保険」と呼ばれています。大切に取っておきましょう。

 

ただ、60歳や65歳で払込満了となったあと、医療保障や三大疾病などの特約は契約が終わり、更新すると保険料が高額になるかもしれません。特約部分の保障は見直しが必要だといえます。

定年後の生命保険新規加入は難しい…早い見直しが必須

そして、見直すならいまです。

 

60歳を過ぎてから生命保険を見直そうとすると、年齢制限で加入できない商品があったり、保険料が高くなったりします。年齢を重ねるごとに健康のリスクは高まり、血圧やBMIなどの数値も悪くなってきます。加入条件をクリアすることが難しくなるわけです。また、薬を服用していると、希望する保険の契約自体ができないケースもあります。引受基準緩和型の保険には入れても、保険料は高くなります。

 

保険は次々と新しい商品が出ており、以前と比べて保険料は安いのに保障は手厚くなっていることも珍しくありません。掛け捨ての保険はいつ解約しても損はないので、いまのうちに入り直す手もあります。

 

それから、定年後に残す保障を取捨選択することも大事です。

 

必要ないと判断した保障は思い切って解約し、保険料として払っていた分を老後資金の備えに回してもいいでしょう。

 

ちなみに、「保険料は一生上がりません」と謳う医療保険が増えてきました。健康への不安が高まる老後の備えとして安心ですし、保険料も手頃でお得に見えます。

 

ただし、保険料が一生上がらない保険とは、保険料を一生払い続ける保険という意味です。

 

年金だけの生活になっても、それどころか80歳、90歳になっても払うことになります。そして、医療保険は入院や手術をしない限り、通常1円の戻りもありません。戻りがある商品は、その分保険料が高く設定されています。

 

老後の生活において、その保障が本当に必要か否かをきちんと見極めてください。

 

 

長尾 義弘

ファイナンシャルプランナー、AFP

 

中島 典子

税理士、社会保険労務士、CFP

 

 

金持ち定年、貧乏定年

金持ち定年、貧乏定年

長尾 義弘
中島 典子

実務教育出版

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