「リピート・アフター・ミー」はすべてに役立つ?
お手本に倣うことをバカにしてオリジナルにこだわるのは自由ですが、私がこれまでに見てきた範囲で言えば、そういうケースに限って、ほかが当たり前にやれている基本ができていないことが多いのです。
マーケティングの世界では「当たり前品質が整っていない」と言います。つまり、オリジナリティはあってもベースとなる品質が低いのです。
当然のことながら、二番煎じであろうと成功したほうが、失敗したオリジナルよりも高く評価されます。失敗したオリジナルは、消えてしまうから歴史に残らないだけで無数に存在しますが、本当に成功した二番煎じは数少ないものです。
そこにはただのコピーでは終わらないオリジナリティの付与が必要になるからです。また、これも当たり前ですが、消費者はオリジナルであるか模倣であるかだけではなく、もっぱら品質とコストで購入を判断します。
ファミリーレストラン、ハンバーガーショップ、牛丼店など、街中にはいろいろな種類の店舗があふれています。それらは最初にそのスタイルで始めたお店と、後追いでコピーしたお店とに分けることができますが、現実にはどのお店で購入するかを判断するときに、オリジナルであるかコピーであるかを気にする人はあまりいません。
・初心者は差別化よりも同質化を目指せ お手本の完全コピーの重要性
もちろん、オリジナル商品の開発にはロマンがあることは私も理解しています。しかし、そもそも人間の想像することやつくるものに、100%のオリジナリティはあり得ません。
どんな商品でもサービスでも、過去の商品やサービスの影響を受けています。コピーは良くないと言うのは簡単ですが、新しいことを始めるときに人の真似をまったくしないというのは土台、無理な話です。
例えば楽器や語学を新しく学ぶときには、最初は先生のやることを真似ることから始めます。「リピート・アフター・ミー」というのは、ネイティブの英語教育の定番です。
教師の言うことをそのまま繰り返すことが、基本を身につけて効率良く上達するための手段だからです。「学ぶ」という言葉の語源は「真似ぶ」だとの説もあるくらいです。最初から違うものを作ろうとしても、基本がおろそかになって、ぐちゃぐちゃのカオスしか生まれないでしょう。
楽器でいえば、何も知らない人がオリジナルだと思ってギターをかきならしても、耳障りなノイズにしかなりません。先人の開発したコード(和音)をきちんと押さえることで、美しい音色が生まれるのです。
ファッションでも、コーディネートを知らない人が自己流で服を選んで着てみても、野暮ったさは隠せないでしょう。最初は「ファッション雑誌に載っているコーディネートをそのまま買ってこい」とよく言われるように、基本を身につけるにはまずコピーから始めることが必要なのです。
ですから、人生経験の少ない若者には特に、最初から差別化を考えるのではなく、まずは目標(ベンチマーク)となる相手の完全なコピーから始めろと、私はよく教えています。
宮井 弘之
株式会社SEEDATA 代表取締役社長
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