少子高齢化が進むと「保険料」の負担が重くなる
年金は、現役世代が納めた年金保険料を、老齢世代に年金として支給する世代間扶養(賦課方式とも言う)の仕組みになっています。
サラリーマンが加入する厚生年金保険制度は、1944年に創設されました。1944年というと太平洋戦争の真っただ中です。なぜそのような落ち着かない時期に制度発足となったのでしょうか。
その理由は戦費調達のためと言われています。年金保険制度は、ある程度の期間、保険料を納めた人が受給資格を得て、一定の年齢になったときに支給が開始される仕組みになっています。つまり、制度の発足当時は保険料を納める人が多く、年金を受け取る人はいない状態が続くということです。不足する戦費を調達するには都合のいい仕組みだったのでしょう。
ところが、日本では第2次ベビーブーム(1971〜74)が終わったあたりから少子化が進行。医療の進展とともに高齢化が進んだこともあり、1997年には65歳以上の高齢人口が15歳未満の年少人口を上回ります(【図1】)。
さらに2014年には、いわゆる「団塊の世代」と呼ばれる1947~49年生まれの人たちが65歳となり、年金受給開始年齢に到達しました。
これに伴って、どういうことが起こるでしょうか。【図2】を見ていただくとわかるように、年金制度の発足当初は多数の現役世代の保険料を少数の高齢者の年金原資とすることができましたが、少子高齢化が進むにつれて少数の現役世代の保険料で、多数の高齢者を支えなければならなくなります。
とはいえ、現役世代の保険料を極端に上げることはできません。となると、年金支給額も減額せざるをえないでしょう。
終身雇用制度の崩壊で「退職金」がゼロになる可能性も
終身雇用は日本企業の「最後の砦」とも言うべき部分でした。学校を卒業して就職したら、その企業で定年まで勤め上げるのが「当たり前」でした。年功序列で給料が上がり、退職するときには多額の退職金を手にすることができました。そういう「安心の見本」が日本企業にはあったのです。
ところが今や、日本のトップクラスの経済団体である経団連の会長と、日本一の企業であるトヨタ自動車の社長がともに「終身雇用を守ることは難しい」と発言する時代です。国際競争にさらされて、企業の体力がなくなってきているためです。
終身雇用が崩れてしまうということは、雇用の安定が失われるということです。「寄らば大樹の陰」というセオリーはもはや通用しなくなりつつあります。どんな大企業に就職して「これで安泰」と思っていても、いつどこで何が起こるかはわかりません。リストラによる失業のリスクは、誰にでもありうると覚悟しなければならないのです。
よしんばうまく生き残れたとしても、年功序列での昇給も期待できず、退職金についても今までのように退職一時金という支給形態や同等の金額を維持することは難しくなるでしょう。
退職金は賃金(給料)のように労働の対価として、雇用する側に支払い義務が生じるものではありません。就業規則に退職金に関する規定がある場合のみ、支払わなければならないものなのです。つまり、退職金を支払う支払わないは、会社側の自由ということです。大きな会社では労働組合などの反対もあるでしょうから、いきなりゼロになるということはないと予想されますが、先行きは決して明るいものではありません。
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