コロナ感染拡大の影響により在宅時間が増える中、高齢者の孤立化が深刻な問題になっています。※本記事では、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏の書籍『不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方』(ポプラ社)から一部を抜粋・編集し、事例を紹介していきます。

また連絡が取れなくなった内田さん…衝撃の理由

ところがなかなかそんな雰囲気にはなりません。内田さんが言っていることは、正論ではありました。謝罪するときは言い訳しない、仲間の失敗は自分の失敗、謝罪するときは相手が許すまで頭を下げ続ける……。厳格な職人気質が、若い担当者が確認不足で起こした失敗を許せなかったようです。

 

その気持ちは理解できるのですが、今の時代、そこまでガチガチに言ってもなぁ……聞いている私もしんどくなってしまいました。未だに現役で大工をしているという内田さん。現場でもこんな感じなら、若い人はついてくるのかなあ、ふとそんな風にも思ったほどでした。

 

やっと話が途切れたタイミングで、私たちはお許しをいただき、解放してもらえました。トータル1時間半。ようやく長かった時間が終わりました。緊急事態宣言中のこの出来事を、私は既に忘れてしまっていた8月。また内田さんの滞納で、相談ごとが回ってきました。

 

これからは毎月支払うと約束したはずじゃない。びっくりして交渉履歴を見ると、また内田さんとは連絡がつかない状況のようでした。

 

高齢者が次の部屋を探すのも、大変なことです。怒りたい気持ちがあるかもしれないけど、皆が皆、自分の思うようには動いてくれないことだってあるはず。

 

仕事をされているなら、自分の主張が正論であったとしても通らないこともあるでしょう。「家族はいない」と言っていた内田さん。木造アパートの1DKにひとりで住んで、寂しくないのかな。若い人たちが慕うようなタイプでもないし……。

 

私はそんなことを思いながら、仕方ないかとまた手続きを始めました。でもその思いは打ち破られたのです。内田さんの住民票を取得してみると、内田さんは既に亡くなっていました。緊急事態宣言中に私たちが行った後、その2週間後くらいです。

 

完全な孤独死でした。死亡年月日が5月21日から6月4日までの間という、特定できない記載になっていました。しかも死亡届が出されたのは6月末。

 

これは何かで内田さんが亡くなったことが発覚し、死因が特定できなかったので解剖となり、おそらくこの間に亡くなったのだろうということで、診断書が出てやっと届出ができたのが6月末ということです。

 

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不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

太田垣 章子

ポプラ社

著者は、20年にわたり2500件以上の不動産トラブルを扱ってきた異色の司法書士。 業界紙・業界誌などでの連載や「家賃滞納という貧困」「老後に住める家がない!」などの著作を通じて(ともにポプラ新書)、業界では知らない人…

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