コロナ感染拡大の影響により在宅時間が増える中、高齢者の孤立化が深刻な問題になっています。※本記事では、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏の書籍『不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方』(ポプラ社)から一部を抜粋・編集し、事例を紹介していきます。

内田さんには娘がいたが…冷たすぎる対応に絶句

私はその住民票から目が離せなくなりました。いったいどんな亡くなり方だったのでしょう。誰にも看取られず、しかも誰にも気づいてもらえず亡くなった内田さん。現役で働いているというのは、違ったのでしょうか。

 

それともコロナの影響で、仕事が一時ストップしていたということでしょうか。これはあまりに淋しすぎる結末です。とにかくまずは相続人を捜すことにしました。家族はいない、そう言っていた内田さんですが、一度結婚され、娘さんがいました。

 

お嬢さんが3歳のときに離婚。娘さんも、すでに50歳になろうとしている年齢でした。さらに驚くことに、死亡届を出された直後に、娘さんは相続放棄の手続きまでされていました。

 

こういったケースは、長いこと会っていないので、借金があるかどうかも分からず怖いので(裕福そうな生活もしていないようだし)手続きを取るというのが一般的です。普通は財産があるかどうか探したりもするのですが、これだけ早くに見切りをつけるというのは、「一切関わりたくない」という意思表示でもあるのでしょう。

 

私からすると、あまりに職人気質で融通がきかないタイプだとは思いますが、内田さんは人が悪いようには思えませんでした。ただ人から無条件に慕われるようなタイプでもなかったのかもしれません。

 

だからと言って、73年も生きてきて、親しくしている人もいなかったのでしょうか。コロナだったから誰にも気づかれなかったのか、それとも内田さんが孤独に生きてきたのか、今となれば誰にも分かりません。

 

ただコロナがなければ、きっと職場の人が気づいて、もう少し早くに発見されたはずです。第三者である私たちは、死亡原因を知ることはできません。せめて苦しまず、忍び寄る死を内田さんが自覚することなく天に召されたことをただただ祈るしかありません。

 

人との関係を遮断してしまう新型コロナウイルス。そんな中で内田さんのケースは、あまりに悲しい結末でした。

※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。

 

 

太田垣 章子

OAG司法書士法人代表 司法書士

 

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不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

太田垣 章子

ポプラ社

著者は、20年にわたり2500件以上の不動産トラブルを扱ってきた異色の司法書士。 業界紙・業界誌などでの連載や「家賃滞納という貧困」「老後に住める家がない!」などの著作を通じて(ともにポプラ新書)、業界では知らない人…

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