コロナ禍で私たちの暮らしに多くの制約が生じるなか、日常を支える「物流」の重要性が再認識されています。人々の豊かで安定的な生活は、物流によって支えられ、維持されてきたといえます。本記事では、日本の経済発展の歴史と常に並走してきた、物流の歴史を紐解いていきます。

吹き荒れる「統合の嵐」トラック業者は約80分の1に

1937年に勃発した日中戦争以後、日本国内ではガソリンをはじめとした物資不足が顕著になり、1939年にドイツがポーランドに侵攻して世界が第二次世界大戦に突入すると、海外からの輸入品は激減、国の統制も厳しさを増しました。

 

1938年に始まったガソリンの消費規制は年々厳しさを増し、1941年の米国による対日石油輸出禁止政策の影響から、バスやタクシー、ハイヤーへのガソリンの割り当てがほぼ全面的に停止。ほどなくしてトラックに対しても4分の3の削減が実施されました。

 

そうした物資不足に対応すべく、代用燃料が検討されたり、企業の整理統合が行われたりしました。この「企業の整理統合」が、通運事業者に極めて大きな影響を与えることになります。

 

1940年、鉄道省は貨物自動車運送事業の第一次合同要網を発表。その時点で全国には2万6548のトラック業者がありましたが、1業者が保有する車両数は1.8台であり、大半が小さな個人業者でした。鉄道省はこれらをできる限り統一し、戦時体制下における輸送効率を高めようと考え、地方では10台、都市部では20台以上の車両を保有する会社へと統合することを奨励しました。これが国による「第一次統合」です。

 

鉄道省による声明には法的な強制力はありませんでしたが、運送業者は各地の警察部保安課により監視され、「統合しなければガソリンの配給を停止する」という脅しに近いことも行われていたようです。

 

第一次統合により、トラック業者の数は3221社にまで減少、保有する車両数の平均は16.7台となりました。1941年12月8日、日本軍はイギリス領のマレー半島と、アメリカ・ハワイの真珠湾を奇襲。それをきっかけとして、アメリカ、イギリス、オランダなどの連合国軍と、日本との間で「太平洋戦争」が開幕しました。日本はついに、戦争へと突き進んでいきます。

 

その後1942年には、国策会社である日本通運が、「第二次統合」の方針を発表。全国主要都市の合同運送会社を日本通運に統合する政策が推し進められ、地方都市においても、地区別または鉄道路線別に統合が進められました。

 

戦時下ということもあり、かなりの強制力をもって統合が実施された結果、各地からさらにトラック業者の数が減りました。

 

この統合政策により生まれた会社は、「地区統合会社」と呼称されました。

 

なお、戦時統合の骨子は次のとおりです。

 

1.区域事業は交通の実情にもとづき道府県を数個の地区にわかち、1地区1事業者を原則として統合を行う。

 

2.区域事業は同一、または近接区間(路線)事業における事業は原則として1事業者に統合し、なるべく区域事業者中適当なものをしてこれを営業せしむる。

 

3.地方の実情に即し、適当なる統合主体を選定、これに対する事業の譲渡、出資または会社の合弁の方法によるを原則とするも適当なる統合主体なき場合においては親会社設立の方法により得るものとす。

 

こうした政策の結果、トラック業者の数は340社、保有する車両数の平均は147.9台となり、大企業化が進みましたが、国の強制でやむなく結びついただけの「烏合の衆」という側面もあり、戦後には多くの会社が統合解体されていくことになります。

 

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※本連載は、鈴木朝生氏の著書『物流の矜持』(幻冬舎MC)より抜粋・再編集したものです。

物流の矜持

物流の矜持

鈴木 朝生

幻冬舎

大正3年、まだ大八車や馬車が物流の主な手段だった時代から、地域とともに歩み、発展を遂げてきた丸共通運。その歴史から、物流業界の変遷、日本の発展を振り返る。 丸共通運は大正3年に創業し、まだ大八車や馬車が物流の主…

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