いよいよ「東京証券取引所」への申請…上場審査へ
■東京証券取引所への申請
東京証券取引所の上場審査は証券会社の推薦(書)により行われます。推薦書には上場会社として問題のない会社であること(事業内容、成長性、反社会的勢力との関与がないことなど)が記載されております。
申請会社がマザーズ市場の適合要件である高い成長可能性を有しているか否かについては、主幹事証券会社が判断することになります。主幹事証券会社は、申請会社が高い成長可能性を有している旨を記載した東京証券取引所所定の推薦書に、申請会社の成長に係る評価の対象とした事業について記載した書面を別紙として添付し、東京証券取引所に提出します。なお、申請会社の利益の額及び売上高が、以下のa又はbに該当するときは、別紙は不要です。
a.最近2年間(通常、申請直前期及び直前々期にあたります)において、最近の1年間の利益の額が最初の1年間の利益の額と比して3割以上増加して1億円以上であり、かつ、最近の1年間の売上高が最初の1年間の売上高と比して増加している場合
b.最近2年間において、最初の1年間は利益の額を計上しておらず、最近1年間の利益の額が1億円以上であり、かつ、最近の1年間の売上高が最初の1年間の売上高と比して増加している場合
推薦書の別紙においては、1)~5)の内容について説明が必要となります。
1) 高い成長可能性の評価の対象とした事業(以下「成長事業」という)の内容(ビジネスモデル等)及び選定理由について
2)申請会社全体及び成長事業に係る経営指標の推移について
●(過年度実績がある場合には)最近3年間程度の実績
● 将来3年間程度の利益計画
3) 成長事業が高い成長可能性を有すると判断した根拠について
4) 事業計画策定のための前提条件
5) 事業計画が合理的に作成されているとの判断に至ったポイント
マザーズ市場を目指す会社は、「高い成長性」について、上場準備の段階で証券会社と綿密に協議することが、非常に重要なTo Doとなります。
■上場審査
「上場審査の形式要件(東京証券取引所の有価証券上場規程第212条関係)」に規定された形式要件をクリアした企業は、東京証券取引所より実質審査として、以下1)~5)の審査が行われます
1)企業の継続性及び収益性
2)企業経営の健全性
3)企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
4)企業内容等の開示の適正性
5)その他公益または投資者保護の観点から証券取引所が必要と認める事項
なお、審査の対象は、形式要件をクリアした企業とその子会社および関連会社により構成される申請会社、申請会社に関連する企業グループです。審査内容は証券会社の引受審査で執り行った内容と大きな差異はありませんが、より慎重な対応が必要となります。書面審査や実地審査に加え、監査役面談、社長面談なども行われ、問題がなければ「上場承認」となります。
■上場承認~ファイナンス
「上場承認」後、すぐに「有価証券届出書」を財務局に提出します。金融庁側で主にEDINETというオンラインシステムを通じて開示(「公衆縦覧」)します。また、有価証券届出書をもとに作成された「目論見書」と呼ばれる、有価証券の募集あるいは売出しにあたって、その取得の申込を勧誘する際等に投資家に交付する文書も作成します。
株価の決定は以下の通りです。
1)会社は主幹事証券会社と相談して、上場承認日以前に「想定発行価格」を準備。
2)想定された価格は「想定発行価格」として目論見書に記載されて開示されます。
3)会社は主幹事証券会社とともに、2週間ほどの短い期間で20~30社の機関投資家を訪問し、自社の事業内容等について説明します。これを踏まえて、主幹事証券会社は各々が想定する妥当な株価についてヒアリングを行います。一連のプロセスを「ロードショー」といいます。
4)証券会社はヒアリングにより、想定株価を取りまとめたうえで、仮条件価格帯を具体的に決めていきます。
5)仮条件価格帯が決まったら、これをもとに、いよいよ一般の投資家から株式購入の申込みを受け付け、その結果を積み上げて具体的な上場時の株価(「公開価格」といいます)が決められます。これをブックビルディング方式といいます。
これらのプロセスを経て、やっと、いざ上場となります。特に「上場承認」~「上場」までのプロセスは1ヵ月ほどで行われますので、経営者にとってはジェットコースターに乗っている気分で上場会社の一員となります。
しかしながら、「上場」は通過点であり、上場後経営者は、上場準備で学んだ考え方を上場会社として実践する試練の始まりといえるでしょう。
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