起業をしたなら「いつか上場できるくらい、大きな会社にしたい」と多くの経営者が思っていることでしょう。本連載では、IPO・上場支援で数多くの実績をあげている株式会社タスク代表取締役の竹山徹弥氏がIPOの基本や必須事項、会社上場にまつわる裏話など解説していきます。今回は、IPOの成功のカギを握る「金融商品取引業者」の選び方などを中心に説明します。

IPO成就の最重要事項「金融商品取引業者の選定」

以下の[図表]にIPOまでの一般的なスケジュールとそれぞれの期におけるToDoを記載しておきます。

 

[図表]IPOまでの一般的なスケジュール

 

IPOを目指す上で最も重要なイベントとして挙げられるのが、主幹事証券会社の選定です。

 

(1) 証券会社の役割

株式上場を申請する会社(申請会社)を支援する業務を担う証券会社のことを「幹事証券会社」と呼び、中でも中心となって申請会社を支援する証券会社を「主幹事証券会社」と呼びます。

 

主幹事証券会社は申請会社の上場にあたり、取引所に「推薦書」を提出します。

 

上場に際しての主幹事証券会社の役割はたくさんあります。上場申請準備段階では資本政策や内部管理体制の整備に関する助言や上場に関する手続きの指導に加えて、公募・売出し株式等を引き受けるために、会社の内容全般にわたる審査を行います。この審査を、引受審査と呼びます。

 

上場を目的とした株式等の公募・売出しを引き受ける際には、一連の事務手続きを日程に沿って実行していく役割も担います。

 

証券会社の体制は、一般的にRM(営業)部門、引受部門、審査部門と3つの部門が、それぞれのタイミングで異なる役割を有しています。引受部門が申請会社の担当になると、上場までのスケジュールが引かれ、会社はそのスケジュールに則りIPO準備のプロセスに入ります。従って引受部門との関係性が、IPOプロジェクトにとって極めて重要なポイントとなります。

 

(2) 主幹事証券会社の選定時期と選定ポイント

主幹事証券会社の選定時期をいつにしたら良いかとよく質問をお受けするのですが、特にルールはありません。遅くとも、上場する期の1期前の株主総会までに決定いただくことが望ましいです。

 

東京証券取引所も主幹事証券会社の指導内容を重視していますので、上場申請をするまでに最低でも1年間、主幹事証券会社の指導期間を置くことが望ましいです。さらにある程度の規模を有している会社の場合、できれば2年間の指導期間はほしいところです。

 

一度主幹事証券会社を決定すると相当な理由がない限り、変更することは難しくなりますので、複数社の提案をよく吟味して選定することが肝要です。

 

選定にあたってのポイントとしては、「株価を含む自社の評価」、「スケジュール」、「同業他社を上場させた経験があるか」、「業界のビジネスと自社を理解してくれる優秀なアナリストはいるか」、「海外オファリングに対応できるか」、「担当者との相性」などが、よく挙げられています。

 

(3) 引受審査(直前期の下期から最短で申請期の株主総会あたりまで)

申請会社は引受部門の指導に基づき、直前々期までに内部管理体制を整備し、直前期初から体制の運用を始め、直前期上期の後半に上場申請書類の重要書類となるIの部、Ⅱの部(もしくはⅡの部に準じた資料)にまとめて、引受部門に提出します。

 

しばしば、上場できない会社はどんな会社ですか? と聞かれます。様々な理由の中で、まさに申請書類を作成できない会社とは、イコール上場に向けた体制を整備できていない会社となり引受審査プロセスに入れず、従って当然上場もできませんとお答えしています。

 

証券会社の審査部門は、提出された申請書類に基づき引受審査を直前期の下期以降に行います。引受審査は通常、中間審査と最終審査の2回行われるイメージで考えてください。

 

中間審査は下期の初めから期末まで行われ、上場会社として相応しい内部管理体制が整備されているかを、その運用実態も見ながら審査を行い、審査結果を踏まえて改善を求めます。

 

最終審査は収益性を中心とした審査になり、直前期の期末から申請期の株主総会あたりまで行います。ここでは、申請会社が示した収益性とその裏付けの合理性が東京証券取引所に申請できる水準に達しているか、総合的に判断します。

 

上場まで伴走してくれる(※画像はイメージです/PIXTA)
上場まで伴走してくれる(※画像はイメージです/PIXTA)
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