筑波こどものこころクリニック院長/小児科医の鈴木直光氏は著書『新訂版 発達障がいに困っている人びと』のなかで、発達障がいとどのように向き合うべきか語っています。本記事では、発達障がいの子どもの特徴や、実際の診断の様子を紹介します。

「C君、こんにちは」ドアが開くと一目散にテーブルへ

ドアが開くと、私には目も触れず一目散にテーブルの上にある自分の好きなミニカーを手に取り、自分の部屋のように遊び始めました。遅れてご両親と保健師が入ってきた時には、すでにミニカーは床に散らかっています。

 

私が「C君、こんにちは」と言っても、こっちを見ようともせず、一心不乱にミニカーで遊んでいます。

 

すると、C君が「あっ、フェアレディーZだ」と言ってパトカーを手に取りました。
そのパトカーは確かにフェアレディーZです。おまけに、C君は、「にっさん」と断言しました。完璧です。

 

私が「よく知っているね」と褒めても照れるわけでもなく、振り向きもせず、「あっ、プリウスだ」と次のミニカーを手に取ります。

 

非常にマイペースです。お子さんの行動に対してどうして良いかわからずに、呆然と立ち尽くしている親御さんたちに、私は「C君のお父さんお母さんですね。初めまして、小児科の鈴木です」とここで初めて自己紹介をし、「どうぞソファーにお座りください」と、まず座らせて心を落ち着かせてもらうことにしました。

 

大切なお子さんのことですから、感情的になったり、動揺しやすくなったりするのは当然ですが、普段のお子さんの様子を落ち着いて、ありのままに喋ってもらうことが診断では大切です。お子さんのことを一番近くで見ている親御さんの情報というのは、正確な診断をする上で、大きな助けとなるからです。

 

「何が一番心配ですか?」と私が聞くと、C君のご両親はお互い顔を見合わせました。

 

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次ページ医師「何が一番心配ですか?」

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『新訂版 発達障がいに困っている人びと』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

新訂版 発達障がいに困っている人びと

新訂版 発達障がいに困っている人びと

鈴木 直光

幻冬舎メディアコンサルティング

発達障がいは治療できる 診断、対処法、正しい治療を受けるために 書版が出版されてから4年、時代の変化を踏まえて最新の研究データを盛り込み、大幅な加筆修正を加え待望の文庫化。 “「発達障がい」は治療ができない…

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