オークションで作品が8億円も…アーティストに入る金額に絶句

Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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価格が上がるアートには常に時代に色あせない価値が

「水玉の女王」草間彌生の作品

 

アーティストはどのようなステップを踏んで有名になっていくのでしょうか。後に広く世間に認められるアーティストの場合、多くは最初ギャラリーで展覧会を開催し、様々な機会を見つけては、実験的な展示やパフォーマンスなどを行い、キュレーターなど専門家の間で話題にのぼるところから始まります。

 

その後、徐々にアーティストとしての露出の機会が増えていき、やがてヴェネチア・ビエンナーレやドクメンタといった大規模な国際展で評価され、独自に展覧会を展開する。さらに時代時代に話題となる作品を制作し、キャリアを積んでいくうちに作家として評価が固まり、価格は上がっていくことになります。

 

はじめから価値の定まったアートなどは、存在しないという。(※写真はイメージです/PIXTA)
はじめから価値の定まったアートなどは、存在しないという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

はじめから価値の定まったアートなどは、存在しません。アーティストが制作し、発表し、評価され、作品が社会の中で共有される過程があってはじめて、芸術的な価値がついていくのです。言い換えると、どんなアート作品にも社会化のプロセスが必要で、その結果、資産としての価値も生まれるのです。

 

例えば、今や「水玉の女王」の異名を取る大変な人気の草間彌生は、1960年代からニューヨークで活躍するアーティストで、代表的な作品には《インフィニティ・ネット》などがあります。網の目状の形がどこまでも続く抽象絵画で、当時の若手のニューヨークのアーティストたちに多大な影響を与えました。他にもソフト・スカルプチャー、ハプニング、インスタレーションなどによるセンセーショナルな作品によって話題を立て続けに提供していきました。

 

白人男性が多い美術界で、日本人の女性で、女性かつ心に障がいも持つという立場で世界的な成功を収めた成功したアーティストは、草間以前にはいなかったでしょう。このように大きなギャップを埋めるということも、現代アートの成功には大事な点です。

 

直島の古い桟橋の黄色いかぼちゃの彫刻は、草間がニューヨーク時代以来、制作してきたものでかぼちゃのシリーズをはじめて屋外彫刻にしたものです。それまで絵画や室内に展示するオブジェとしては制作してきましたが、屋外用の大きなかぼちゃは、私が直島にいた時期に依頼したものです。

 

かぼちゃのシリーズは80年代後半、すでに1000万円前後で取引されていましたが、2000年代には5000万円から1億円ほどになり、2015年10月に香港で開かれたサザビーズのオークションでは、約8億円で落札されました。作品における価格の高騰は、世界において作家の認知の広がりに対応します。欧米から広がった人気はやがて、他の国、地域へと広がっていったのです。草間作品の価値は、今後右肩上がりとなっていくでしょう。

 

価格の上がるアーティストは、常に時代に色あせない価値、何世代も地域も超えた普遍性を持ちます。誰からも受け入れられ、かつ次の時代をつくり出すクリエイティビティがあり、はじめてアーティストとして成功するのです。草間を目指す若手の女流アーティストは世界中に誕生しましたが、草間のような成功は、限られた人のみが成し遂げられることです。

東京藝術大学大学美術館 館長、教授 練馬区立美術館 館長

1955年東京生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科卒業後、作家兼アートライターとして活動。

1991年に福武書店(現ベネッセコーポレーション)に入社、国吉康雄美術館の主任研究員を兼務しながら、のちに「ベネッセアートサイト直島」として知られるアートプロジェクトの主担当となる。

開館時の2004年より地中美術館館長/公益財団法人直島福武美術館財団常務理事に就任、ベネッセアートサイト直島・アーティスティックディレクターも兼務する。2006年に財団を退職。2007年、金沢21世紀美術館館長に就任。10年間務めたのち退職し、現職。

著者紹介

連載ビジネスエリートに欠かせない「現代アート」という教養

アート思考

アート思考

秋元 雄史

プレジデント社

世界の美術界においては、現代アートこそがメインストリームとなっている。グローバルに活躍するビジネスエリートに欠かせない教養と考えられている。 現代アートが提起する問題や描く世界観が、ビジネスエリートに求められ…

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