医学部に学士編入しても辞める学生もいる
オリンピックや食品ロスのネタなどはとっつきやすいですが、あまり良い選択とは言えません。尊厳死、安楽死などの話題は重く、面接官から突っ込んだ質問をされることが予想されますが、真摯に考えを伝える姿勢は評価につながります。Lさんの場合は安楽死が出題され、対策をしていたのでうまくまとめることができました。
10分間のスピーチは長く感じられますが、3分間ほどでスピーチが終了してしまった人でも、質疑応答でていねいに考えを伝え合格したケースもあるので、時間にとらわれすぎずに取り組むことが大切です。
入学後の編入生
学士編入生の生活は、やはり勉強に追われることが多いようです。Lさんは想像はしていたものの、厳しいスケジュールのなかで広範囲の勉強をすることに難しさを感じています。
1年次に1年分のタイムテーブルが配られ、それに沿って授業は進められます。1週間ごとの時間割ではなく、この日の午前は生理学で午後は化学、来週の午前は応用物理で午後は細胞学、といった具合に、集中して学ぶ形式です。
骨学の授業では、9時から16時半まで、午前3時間・午後3時間の時間割で3日間集中して学び、2日後には試験というスケジュールでした。前日に他教科の試験があると大変ですが、試験を通らなければ追試があり、そうなると、また次の試験と重なる可能性もあり、どんどん追い詰められていくのです。追試を落とせば留年が決定するのですから、気が気ではありません。
そうした集中講義が、生理学、内分泌、神経、運動、感覚器、と広範囲にわたるので、記憶力の高さが求められます。なかには、教授が用意したレジュメ100枚の内容を、2日で丸暗記しなければならないようなこともありました。学内では、先輩などから情報を得て、学内試験の過去問を共有でき、めいめいが試験対策をしているそうです。
Lさんは、毎日16時半に授業が終わると19時半くらいまで図書館で勉強し、帰宅してご飯を食べるとまた勉強をして、夜0時過ぎに就寝。朝は7時に起きて登校する生活を送っています。休日も勉強時間に充てる生活をしています。
一般入試の入学者は部活動やクラブ、サークルに所属している人もおり、試験前にスパートをかけて勉強をする人が多いそうです。いっぽう、附属高校から進学してきた学生は、勉強にやや苦戦している人が多く見受けられるようです。
また、偏差値が高いから医学部を選んだが、せっかく大学に入ってもこのような勉強漬けの毎日ではつまらない、と辞めていく学生も稀にいるようです。
すんなりと医学部に来た人ほど、医師や医学にそこまでの価値を感じていないのかもしれません。医学部に入れる学力があれば、他の大学や学部にも難なく入れますし、ここで苦労する理由がないと考えるわけです。
私が知る学生のなかに、東大の理系を卒業してから医学部に学士編入した人がいましたが、1、2年で辞めてしまいました。学士編入であっても、医学に興味を持ち続けることができない人は、卒業まで辿り着けないのです。