日本において、会社の売買は、あたかも家族を売買するような後ろめたさを伴うものだと考えられていました。しかしながら、ここ10年ほどでM&A(会社の合併及び買収)が拡大しています。その理由を、M&AアドバイザリーサービスだけでなくM&A後の統合作業や組織再編、事業再生などのサービスを提供する株式会社すばる代表取締役の牧田彰俊氏が解説します。

「買収をしたい」企業が増加している背景

ここ10年ほどで日本の会社を取り巻く環境は大きく変わりました。日本でもM&Aの件数はおおむね右肩上がりで増加しており、それにつれて、M&Aイグジット(自己資金と労力を投じて会社を起ち上げた起業家が、M&Aでその会社を売却すること)に対するイメージも変わりつつあります。

 

その背景には、大きく4つの理由があると考えられます。1つめの理由は、マクロ経済的な事業環境や産業構造の変化を背景として、需要サイド、つまり買収をしたい企業が増えているという点です。

 

M&A買収ニーズの増加も、いくつかの観点からとらえることができます。まず、ICT(情報通信技術)やIoT、AIの急速な進歩や、それらをビジネスに応用してビジネスモデルの革新を図るDX(デジタルトラスフォーメーション)の進展があります。

 

さらに足元ではコロナ禍を経た「新しい生活様式(ニューノーマル)」下での、消費者の行動様式の変化、テレワークやジョブ型雇用の推進などの雇用環境・就労環境の変化なども、急速かつ広範囲で進展しており、企業の外部環境、内部環境に急激な変化をもたらしています。

 

このような環境変化が激しい時代には、自社内で長い時間をかけて一つの事業を少しずつ育てていくよりも、ある程度育っている事業の「苗」を見つけて購入し、それを促成するほうが変化への対応がしやすいという、買い手側の事情があります。

 

日本の多くの大企業も先に述べたように、大量のM&A買収をしているGAFAMのようになってきているということです。また、かつて世界トップだった日本の半導体産業が、韓国や台湾に完全に市場シェアを奪われてしまったことに端的に表されているように、「失われた30年」ともいわれる平成バブル崩壊以降の低成長・マイナス成長時代を経て、多くの日本の産業は国際競争力を失いました。

 

その要因の一つには、人材リソースにおいて日本型雇用慣行と表裏一体となった自前主義があったと考えられています。日本型雇用慣行は、かつては日本企業の強みの源泉だと評価されることもありましたが、いまやそれは足かせだととらえられるようになったのです。

 

そこで、新たな成長戦略の一環として、オープンイノベーションを積極的に採り入れる企業が増えています。オープンイノベーションには、事業連携や技術提携など部分的なものもありますが、M&Aや資本投資(CVC:コーポレート・ベンチャーキャピタル)などの形で、根幹的、全面的に行われる場合もあります。これらも、マクロ的な環境変化によるM&Aニーズ増加の背景だといえるでしょう。

 

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牧田 彰俊

幻冬舎MC

日本でも脚光を浴びつつある『連続起業家』という生き方。 150件を超えるM&Aのサポートをした著者が、連続起業家になるための失敗しない起業・会社売却の成功サイクルを解説する! 最近広く知られるようになってきた「連続…

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