上司を激怒させた、「社員として失格の一言」
ある日、会社に届け出る諸々の手続きについて上司に質問をする中で、部署内の事務の女性社員の名前がわからずに、「事務のおばちゃんに言われました」と上司に話したところ、それまで全く怒ったことのない温厚なその上司にひどく叱られた。
「おばちゃんじゃない! 一人ひとりにちゃんと名前があって、役割がある。みんながその役割を果たしてくれるから会社の仕事が成り立つってことをわからないようでは当社の社員として失格だ」
今でもそう言われた時の、自分の学生気分が抜けていない恥ずかしさを覚えている。事務なんて誰にでもできる、とその時の僕は軽視していたのであろう。もちろん、そんなことはないのだ。〇さんが事務をやってくれているから自分の仕事もスムーズに進むし、〇さんだからこそできる、大切な「1」なのだ。
その上司にはこうも言われた。
「今おまえにやってもらっている仕事くらい、俺がやろうと思えばできるし、俺がやった方が早い。でも、どんな些細なことでもお前がやってくれると、その分手があくから、俺が次のステップに手が届く。だから全体としては高い成果が出るんだから、お前のその部分的な仕事も大事なんだ」
当時こう言われた僕はなんとなく「そんな言い方するならあんたがやってくださいよ」とか思って腹立たしく感じたような気もするが、今思うとこんな言葉をかけてくれる上司もなかなかいない。当時に戻れるのなら、「ご指摘ありがとうございます」と伝えたい。
こういったことの積み重ねで、僕は「1を発揮する」大切さを身に染みて実感していった。
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中根 義将
福井大学卒業。新卒入社した株式会社大林組にて、2011年に発生した東日本大震災の復旧工事を中心に、7年間にわたり現場監督として活躍。復興活動に携わる中で、地元・神戸市に恩返しをするのが使命と悟り、2015年に祖父の代から続く株式会社白川工芸社へ。2017年、同社代表取締役就任。大林組時代に培ったマネジメント力をもとに「人を活かした経営」、「建設業界の働き方改革」に取り組み、それまで三期連続赤字、債務超過であった同社を1年で黒字化。2年目には債務超過も解消し、V字回復を果たす。現在も「地域に愛される次世代の塗装店」を目指し、幅広い活動に取り組んでいる。 著書に『スマートゼネコンマン』(幻冬舎ルネサンス新社)、『ペンキ屋の若旦那が教える仕事の流儀』(kindle)がある。
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