従業員が「同僚のお見舞い」を喜ぶとは限らない
従業員が50人前後の規模の企業の場合、社内の風通しがいいので、何かあると従業員の全員が知ってしまうような面があります。
ある従業員は、がんに罹(かか)ってしまったのですが、従業員全員に知られてしまいました。次々と従業員がお見舞いに訪れ、本人としてはうれしくない事態になってしまいました。従業員からしてみれば、心配しての行動だったのですが、同僚であっても、あるいは同僚だからこそ、知られたくないこともあります。
とくに病気の場合は、「他の人に知られない権利」があると考えています。これが従業員10人前後の企業であれば諦めもつくかもしれません。自分が休むことで必ず誰かに影響が出ますので、理由をきちんと説明しなければなりません。
しかし、50人前後になると、ほとんど顔を合わせない従業員もいるはずです。にもかかわらず、個人的なことを知られてしまうのは本人も納得できない思いがあるでしょう。ほとんど交流のない人が入れ替わり病室に見舞いに来れば、疲れてしまいます。
「お見舞いの有無」は退職に関わる…素人の判断は危険
産業医が早い段階から介入していることで、こうした事態を防ぐことができます。社内の限られた人だけがその人の病気のことを知るのにとどめて、適切な対応ができていたはずです。本人にしても人事担当や経営層が知るのは仕方がないと理解できるはずです。
企業としても、50人の従業員が見舞いに行ったら、相当な人件費をかけていることになります。にもかかわらず、本人は喜んでいないとしたら、これほど不幸なことはありません。本来なら、数人がお見舞いに行けば、本人も会社が心配してくれているとの満足感もありますし、負担にもなりません。
この点は難しい面があるのですが、本人が病気のことを知られたくないだろうと配慮して、誰もお見舞いに行かないと判断したケースも別の企業でありました。このとき病気をした従業員は、復帰後、すぐに退職しました。会社は自分のことを心配してくれなかったと感じてしまったのでしょう。
ですから、どういう配慮がいいかは難しいのですが、産業医はさまざまな事例を経験していますので、ベストに近いアドバイスをすることができます。
従業員数が50人前後になると「メンタル不調」が増加
また、従業員数が50人前後になると、メンタル不調を起こす従業員の比率が明らかに上がります。更に、1人がメンタル不調を起こすと、次々とメンタル不調の従業員が出るケースも多くなります。
つまり、メンタル不調は本人だけではなく人間関係も含めた職場環境に問題があると考えられます。
それは一つの部署の中だけでなく、営業部に問題があれば、企画部にも同じ問題が潜んでいる可能性があります。たとえば、営業部でノルマで苦しんでいる従業員がいれば、企画部には上司からの指導が厳しくてストレスを抱える従業員がいるなど、部署が違っても同じ構造が存在しがちです。
そんな中で、どこかの部署で1人、メンタル不調を訴えると、「私もひどくなる前に休んでおこう」となるのかもしれません。従業員数が40人、50人の規模になると、社内がいくつかの部署に分かれるようになりますが、どこかの部署でメンタル不調が発生すると、他の部署にも広がっていくケースはよくあります。
メンタル不調に陥る人が、1人出てしまうと、2、3人は同じ思いを抱えている可能性があります。ですから、1人が出る前に防ぐための取り組みをしておくことが大事になります。
富田 崇由
セイルズ産業医事務所
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】