(※写真はイメージです/PIXTA)

人口が減少の一途を辿るなか、歯科業界では患者の奪い合いが激化しています。これからの時代、経営戦略なくして歯科医院が生き残ることはできません。具体的にはどのような選択肢があるのでしょうか? ここでは、かつて古くて患者の少ない医院を引き継いで開業し、5年間で25医院を展開するに至った筆者が、「差別化」の方法を紹介します。

価格設定が高くなる…「治療技術で差別化」の難しさ

歯科医院の差別化の方法の一つとして、治療技術に突き抜けることが挙げられます。

 

技術で突き抜けようとするならば、たいていの医院では保険診療よりも自由診療に力を入れると思います。その際にはインプラントや矯正歯科などの分野が視野に入ってくるでしょう。いい治療というのはほとんど、数字でいえば約8割の治療が自由診療です。保険診療では最低限の治療しかできません。

 

極端な例を挙げれば、もしすばらしい技術をもっていて自由診療だけを行おうとするのであれば、開業当初から1日一人の患者で数百万円の治療費を取ることも可能です。そうなると自分一人と一人の衛生士でその医院は成立してしまいます。

 

あくまで机上の計算としてですが。もちろん、価格で勝負しようとすれば技術がものをいうため、誰にも劣らないような相当な技術が必要となります。

保険8割、自費2割で「千客万来の医院」を目指す

また別の差別化の方法として、患者さんを大勢集められる医院をつくるという手もあります。私の場合はすぐに突き抜けた技術を用意することが難しかったので、まずは千客万来の病院をつくることを目指しました。この場合、あまり高くない価格設定が基本となるので、保険診療がベースとなります。

 

とはいえ、保険診療だけに規定するのではなく、平均程度の価格で自由診療も行うことがベターです。100人の患者さんが来て、そのうちの20人が自由診療を選べば、それでその医院の経営は十分に成り立ちます。この場合の自費率は20%ですが、患者さんの数が多くなればなるほど、同じ比率で自由診療を選ぶ患者さんの数も膨らむ計算です。

 

そこで私が心掛けたのは、まずベストの治療法、つまり自由診療を提案することです。同時に最低限の保険診療についても必ず説明します。当然、ベストな治療はコストが掛かるため無理な人もたくさんいます。そこに対してセカンドベストの選択肢を提案するというわけです。

 

 

例えば歯がないとすれば、最低限が保険適用範囲での入れ歯で、ベストはインプラントだとお伝えします。上の歯が1本もなくても同じです。もし入れ歯が嫌ならばインプラントになります。ただ全部インプラントにしたら14本なので、高額になります。これがベストですが高い。入れ歯にすると、保険の入れ歯であれば1万円のものから存在し、インプラントとはまったく違う世界です。

 

この間を取るとすれば、セカンドベストの治療は、インプラントを4本くらい打ち込んで、そこに入れ歯をはめ込むという治療です。そうするとまったく入れ歯が動かず、さらに入れ歯を小さくできます。すべてインプラントにする場合に比べ、かなりのコストダウンになります。

 

あるいは入れ歯の種類を良くするという方法もあり、この場合は20~30万円くらいです。そういう選択肢を出して、いくらのものを選択するかを尋ねます。

保険診療か自由診療か?患者の9割は「プレゼン次第」

私が大学を卒業後勤めた歯科医院は、保険診療が9割の医院でした。ただ、患者さんの数はものすごく多かったのです。保険診療中心ではあるものの、ドクターの治療はとても上手でした。

 

一方で、研修でまったく違うタイプの歯科医院を知りました。場所も東京のおしゃれなゾーンの一等地にある医院です。こちらのドクターにもお世話になったのですが、都内でいちばん古い医療法人で、そこには芸能人も多く来院していました。

 

その両方の医院で学んだことが一つあります。それは、例えば100人の患者さんがいると、およそ5人は最初からとにかく最高の治療法でやってほしい、という不文律です。全体の5%です。逆に別の5人は保険の範囲内でやってほしい。残りの9割の患者さんは説明次第でどちらにもなる可能性があると思いました。

 

その患者さんが自由診療を選ぶかどうかは、医院、そしてドクターの技術力であり魅力なのです。患者さんに対するプレゼンテーション力といってもいいかもしれません。私はこの学びを常に意識し、二つの良いところを組み合わせた理想の医院を目指すようになりました。

 

 

河野 恭佑

医療法人社団佑健会 理事長

株式会社デンタス 代表取締役社長

 

 

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※本連載は、河野恭佑氏の著書『歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略

歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略

河野 恭佑

幻冬舎メディアコンサルティング

コンビニエンスストアを1万軒以上も上回る歯科診療所の施設数。 一方で少子化によって患者は年々減少し、過当競争が激化しています。 年間で1600軒もの施設が廃業し、「大廃業時代」といわれる歯科業界で生き残っていく…

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