(※写真はイメージです/PIXTA)

これからの時代、歯科医院が生き残っていくためには差別化が欠かせません。開業当初、差別化を図るために筆者が目指したのは「患者さんを大勢集められる医院」でした。患者はまばらでスタッフはゼロという窮地を抜け出し、繁盛するに至った方法を明かします。

治療や接客…「どの医院でもやっていること」で差別化

保険診療と自由診療とが併存していると、目立つのは自由診療です。レーザー治療とか削らないで虫歯を治すとか、高いインプラントの技術とか、私たちも取り組んでいますが、そうした治療はかなり特殊な分野の治療です。それに力を入れることも大切ですが、それよりも、9割5分以上の方が日常的に歯科医院で行っている治療をもっと精度を上げていく。

 

例えば保険適用内での虫歯治療、歯を抜くこと、根の治療といった、どの医院でも誰でもやっていることの精度を上げていくことに注力しました。基本の能力を上げていく、当たり前のことの精度を上げていくということです。

 

これは内部マーケティング(接客態度や電話応対の向上など、お金をかけないマーケティングのこと)も同じです。挨拶をするにしても、ただ「おはようございます」と言うだけではなく、言ったあとにしっかりと頭を下げる。通りすがりではなく、ちゃんと立ち止まって挨拶をするといった精度を極めることが重要です。

 

治療にしても、内部マーケティングにしても、誰でもやっていることの精度を一つずつ上げていく。私が開業当初、お金もないなかでやっていったのはそういうことでした。

 

ブラックボードやブログ…地道な取組みこそ繁盛のカギ

そのほかにもいろいろと試してみました。カフェなどでよく見掛ける、店外のブラックボードを毎日医院の前に出しました。そのボードにチョークで何を書くか、それを私も含めてスタッフ全員で持ち回りで担当しました。同じものを毎日出していても、それでは景色の一部となってしまい意味がありませんから、2週間に一度は必ず書き換えます。

 

さらに、毎日角度や置く場所を変えて変化をつけます。もちろん、往来の動線に合わせて、例えば通勤路であれば朝は駅とは反対側に向け、夕方は駅の方角に向けるなどの小まめな工夫も必要です。

 

内容はキャンペーンのお知らせであったり、季節に合わせた問いかけであったり、身近な情報など、常に新鮮であることが大事です。当番がそれぞれ自分で考えます。それも訓練です。得意な人に任せるのではなく、書くのが苦手な人も含めて全員で回します。

 

ブログも同様に皆で担当しています。スタッフ全員で回す。係をつくるとその人だけの負担になる。全員で回すとやらざるを得ない。ドクター、衛生士、助手、受付。現場にいるメンバーで回していきます。

 

このような取り組みは、多くの歯科医院ではまだまだやっていないところも多いです。このような地道な取り組みは、今も大切な私たちの活動の根幹です。スタッフもゼロで患者さんもちらほらだった最初の状態を改善し、繁盛する歯科医院にすることができた礎だと、自信をもって言えます。

 

加えてドクターの気構えとしては、とにかく偉そうで、素直に謝れない人が多い気がします。そういう性格を変えていくだけでもほかと違った雰囲気がつくれます。それを私が率先して、さらにはほかのドクター、スタッフ全員で徹底しました。

診察直後に「数ヵ月先の定期健診ハガキ」を書く理由

歯科医院にとって定期的な来院を勧めるリコール(定期健診=再初診)は大切な行為です。営業的にも重要ですが、その患者さんの歯の健康を中長期的に考えるうえでも、もちろん大切なのです。

 

私たちは、リコールになった患者さんへ必ず手書きのハガキを出しています。診療が終わった際に、住所だけを必ず本人に書いていただきます。そのハガキを通常3ヵ月後に投函します。

 

ただ、手紙の中身はその人を診察した当日に書いてしまいます。最後に話した内容など、書くべきことを忘れないうちにしたためるわけです。

 

治療が終了した際に極力、リコールの予約を入れてもらいます。ただ、数ヵ月後のことですから、ほとんどの人は「分からない」と答えます。「また電話します」がいちばん多い反応でしょうか。そこで諦めない。

 

「それでも皆さん取っていただいていますので、とりあえず予約しませんか? それで万が一都合がつかなくなったら、キャンセルは差し支えありませんから」と押します。そう言えば、大概の方が予約を入れてくれます。その予約をコンピュータに打ち込んで、診察券に次回アポを印字します。

 

この時点でどうしても予約を入れていただけない人は来院しないことが多いです。予約を入れてくれた方は、ほぼキャンセルなしで予約どおりに来院されます。

 

そこでその日が近くなったら、ハガキを出します。「その後、治療した歯の具合はいかがですか?」とリマインドします。治療当日に書いていますから、細かな内容が、患者さんに臨場感をもって伝わります。

 

確かにこれは営業の知恵でもあるでしょう。しかし、そのベースにあるのはあくまでも、患者さん本位です。二度と前のような状況になってほしくないための転ばぬ先の杖なのです。

 

 

河野 恭佑

医療法人社団佑健会 理事長

株式会社デンタス 代表取締役社長

 

 

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※本連載は、河野恭佑氏の著書『歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略

歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略

河野 恭佑

幻冬舎メディアコンサルティング

コンビニエンスストアを1万軒以上も上回る歯科診療所の施設数。 一方で少子化によって患者は年々減少し、過当競争が激化しています。 年間で1600軒もの施設が廃業し、「大廃業時代」といわれる歯科業界で生き残っていく…

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