不動産取引を行うにあたっては、都市計画法や建築基準法によって定められた規制をしっかり把握し、正確に理解しておくことが重要です。メガバンク出身の金融・ファイナンスの専門家藤波大三郎氏が解説します。※本記事は、『たのしく学べるファイナンシャルプランニング[改訂版]』(創成社)より抜粋・再編集したものです。

建築基準法の「建ぺい率・容積率」は緩和される場合も

建ぺい率、容積率については、これらを用いて、ある土地にどの程度の大きさの建物が建築できるかを計算することを、ボリュームチェックと呼んだりします。建ぺい率や容積率の規制は、建築できる建物の大きさを制限しないと、火事の危険、日照、通風、天空の問題などがあるために作られています。

 

この建ぺい率は緩和される場合があり、特定行政庁の指定する角地で、防火地域内にある耐火建築物である場合は20%加算となり、仮に建ぺい率が80%の地域であれば、100%の建物が建てられます。なお、建ぺい率は、建物が地面に接するところで計算します。横浜スタジアムの形が逆円錐形になっているのは、建ぺい率をクリアーし、同時になるべく広い客席を確保するためだそうです。

 

13の用途地域は、第1種低層住居専用地域という閑静な住宅地から工業専用地域という危険物の多くある地域まであり、建物の種類によって建築できないものがあります。たとえば、診療所はすべての地域で建築できますが、病院は第1種、および第2種低層住居専用地域、工業地域、工業専用地域では建築できません。閑静な住宅地を病院めがけて救急車が走るということでは環境を維持できませし、工業地域、工業専用地域では出入りのトラックなども多く、救急車が頻繁に出入りする病院は不適切でしょう。

 

一方、保育所はすべての用途地域で建築できます。しかし、幼稚園は工業地域、工業専用地域では建築できません。なお、用途地域は2つの種類にわたるときは、面積の広い方の用途制限が敷地全体に適用されます。

 

容積率とは、地域で行われる各種の社会経済活動の総量を誘導することにより、建築物と道路などの公共施設とのバランスを確保することを目的として行われており、市街地の環境の確保を図るものであるとされています。この容積率については、同じ地域でもその土地が面している道路の幅員によって制限が変わってきます。12メートル未満の道路に面している場合は、住居系の用途地域は前面道路の幅員×0.4、商業・工業系の用途地域の場合は前面道路の幅員×0.6を計算し、指定容積率と比較して小さい方になります。

 

なぜ前面道路の幅員で決めるかといえば、火事の危険などが道路の幅員に影響されるからで、狭い道路に面していれば小さな建物にしておく方が良いわけです。なお、複数の道路に面する場合は、幅員の大きい方で計算します。

 

ある土地が異なる制限の地域に渡る場合、建ぺい率と容積率は加重平均を用います。用途市域については、過半の面積の方となります。防火規制では厳しい方によることになるという点が試験では重要です。

 

その他の制限として、斜線制限があり、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限、日影規制があって、これらも重要な規制となっており、建物を真横から見たとき、空間を斜線で切り取ったような形に制限することから斜線制限と呼ばれています。特に道路斜線制限は、道路上の空間の確保が目的であり、すべての用途地域で規制が実施されており、住居系ほど厳しくなっています。

 

マンションなどの建物の上の方に切り取られたような部分が見られることがありますが、それはこうした斜線制限の範囲内でできるだけ高さや容積を確保することを意識して設計した結果です。

 

また、防火規制については、防火規制が異なる地域にまたがって建物を建てる場合は、厳しい方の規制が適用されることに注意が必要でしょう。

マンションにおける「区分所有法」の規定とは?

マンションについての区分所有法の規定ですが、区分所有者は全員が管理組合の構成員となり、建て替えを行うには区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成が必要という点が重要です。

 

マンション管理組合の活動は重要であり、建物の寿命に影響します。米国では、長期修繕計画を始めとする管理組合の運営状況について、中古マンションを買おうとする人は無論、住宅ローンを貸し出す銀行もチェックすることができます。中古マンションは、「管理を買う」といわれ、管理組合の活動は買い手から重要視されています。近年、話題となっている民泊についても管理組合の規約によって禁止とすることがマンションの価値の維持になるとされるなど注目されています。

 

マンション管理組合が抱える現在の大きな問題は管理費および修繕積立金の滞納でしょう。管理費は管理業者に法定点検や日常の清掃などの委託の為に支払われ、修繕積立金は共用部分の補修のため積立預金されますが、これが不足することにより管理が行き届かず補修もままならない状態が続くとマンションの価値が低下してゆきます。

 

これにより入居率が低下することで物件価格や賃貸時の家賃相場がさらに低下するという悪循環に陥り、スラム化してゆきます。マンションの管理関係の情報のうち、管理規約、管理費の内訳、修繕履歴、修繕積立金の残高、管理費の滞納状況などは宅建法35条に定められた重要事項にあたりますので不動産仲介業者から購入前に説明を受けることができます。

 

日常管理を賄う管理費の金額が高く、修繕積立金が低めであったり、管理費が滞納されていれば、マンション管理組合が機能していない可能性が高く、こうした中古マンションの購入は避けた方が良いといわれています。

 

藤波 大三郎
中央大学商学部 兼任講師

 

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