宅建業者へ依頼には「3つの契約パターン」がある
宅地建物取引業とは、事業者が不特定多数の人に対して、宅地・建物の売買や賃貸を行うことを指します。自ら自己の所有する宅地・建物の賃貸を行う者は宅地建物取引業とはならないのでアパートの経営者は宅地建物取引業者となりません。
第2次世界大戦後の日本は空爆による住宅被災・戦地からの帰国者による人口増などにより住宅難の時代を迎えました。しかし、当時は不動産取引を規制するものがなにもなく、取引の仲介を行うのに資金力がなくても報酬を得られることから専門的な知識や経験のほとんどない者が取引に従事し、手付金詐欺・二重売買などを行う悪質な業者が横行しました。これらを規制し不動産業が健全な発展を図れるよう、昭和27年(1952年)に宅地建物取引業法が制定されたという経緯があります。
土地・建物を売ろう、貸そうとする人が宅建業者に依頼する時には、3つの契約パターンがあります。
一般媒介契約は、依頼人は複数の宅建業者に依頼ができ、また、自分でも買い手、借り手を探すことができ、契約期間も自由です。それに対して専任媒介契約は、依頼人と宅建業者ともに契約の拘束が厳しくなり、依頼人は複数の業者に依頼できず、契約期間は3カ月を上限とします。さらにそれより拘束力が強いのが専属専任媒介契約です。これは、自己発見取引、つまり、自分で買い手、借り手を見つけることもできません。
宅建業者の仲介業務は一般に成功報酬ですので、成約に至りそうな物件を優先的に活動します。そのため、優良物件であればあるほど、専任媒介や専属専任媒介にして自社にだけで取り扱わせてもらいたいと申し出る傾向があります。
宅建業者の事務所で契約を…クーリング・オフは可能?
この仲介業務には、両手取引と呼ばれて売主の依頼と買主の依頼を同じ宅建業者が受ける取引があります。これには利益相反の問題が根本にあります。
こうした問題を少しでも改善するために、不動産流通標準情報システム、通称、レインズ(REINS)での情報開示が業者の囲い込みとよばれる行為を防ぐために、2016年から売却依頼主が依頼物件の内容を確認できるようになっていますが、根本的な解決にはなりません。
なお、レインズへの登録義務は専任媒介と専属専任媒介の場合だけであり、一般媒介の場合は任意となっています。登録義務のある場合もそれぞれの登録期限の最終日に登録する場合が少なくないといわれています。
宅建業者の手数料は、売買代金の概ね3%ですから、両方から手数料が得られれば、多額の収益となるため、両手取引はなくらないといわれています。米国では両手取引は禁止されています。なお、賃借契約の場合の報酬は、双方から合わせて賃料の1ヵ月分以内となっています。
そして、売買契約、賃貸契約が締結されるときには、宅地建物取引業者は、一般の従業員ではなく、宅地建物取引士の資格を持つ従業員により、物件についての重要事項を記載した書面を顧客に交付し、説明をさせなければなりません。その際、宅地建物取引士証を顧客に見せる必要があり、これを怠ると10万円以下の過料が科せられます。なお、宅地建物取引士証の提示の際、取引士証に記されている住所欄にシールを貼り隠すことができます。これは、宅地建物取引士の個人情報保護の観点からの措置です。
宅地建物取引士は事務所ごとに5人に1人以上の割合で置く必要があります。不動産の取引は金額が大きく、また、一般市民にとっては取引の回数が少なく知識も少ないため、公正取引を維持するためにこうした規制があります。
なお、宅地建物取引業者の事務所で買い受けの契約をした場合、クーリング・オフはできません。クーリング・オフは、不意打ち的勧誘から消費者を守るための制度だからです。
クーリング・オフ制度がわが国で初めて導入されたのは、1972年に割賦販売法が改正されたときでした。対象となったのは消費者が訪問販売で、かつ割賦販売の契約をした場合であり、クーリング・オフ期間は4日間でした。当時は訪問販売などに関する法律が存在しない時代であり、百科事典などの訪問販売トラブルに対し、まず割賦販売法を改正して対処しようとしたものでした。その後、多く取引に拡大してゆきました。なお、現在のクーリング・オフ期間は8日間です。
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