不動産取引を行うにあたっては、都市計画法や建築基準法によって定められた規制をしっかり把握し、正確に理解しておくことが重要です。メガバンク出身の金融・ファイナンスの専門家藤波大三郎氏が解説します。※本記事は、『たのしく学べるファイナンシャルプランニング[改訂版]』(創成社)より抜粋・再編集したものです。

都市計画区域・市街化区域を定める「都市計画法」

都市計画法では都市計画区域を定めるのですが、その境界を定めることを線引きと呼んでいます。市街化区域とは、これから市街化を図る地域と既に市街地となっている地域を指します。市街化調整区域とは乱開発を防ぎ、市街化を抑制する地域であって、調整という名称に惑わされないことが必要です。この都市計画は都市の状況によるので、大都市では都道府県の境を超えて地域が指定されることもあります。

 

開発行為の許可制度ですが、開発行為とは土地の形質を変更することをいいます。土地の形質の変更とは一般に宅地以外の土地を形を変えて宅地にすることを指します。市街化区域内で行う1,000m2未満の開発行為は例外として都道府県知事の許可が不要です。それ以上ですと、住民の数が増え、上下水道の整備、小学校の建設などの問題が大きく、行政のさまざまな準備のための調整が必要となります。そのため、許可申請をする者は、事前に道路などの公共施設の管理者の同意を得たり、建設予定の公共施設の管理者と協議する必要があります。

 

なお、開発許可は地権者の相当数の同意があれば申請ができ、全員の同意は不要です。

 

そして、市街化区域には13種類の用途地域が必ず定められています。これによって建築できる建物は細かく制限を受けており、調和のある都市を作ることになっていますが、工業地域にマンション群ができたり、実態の方が先行して変わってゆく場合もあり、用途地域の制度には議論もあるようです。なお、市街化調整区域には原則として用途地域の定めはありません。

 

また、建築物を建築する場合は、次に述べる建築基準法に基づく建築確認が必要となります。この建築確認がないと住宅ローンの審査が受けられません。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

衛生問題も考慮されている「建築基準法」

建築基準法関係では道路に関する制限があります。これについては、原則、幅員が4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければ建物を建ててはいけないという接道義務が有名です。4メートルの意味は車が対面で行き来できる幅という意味で、2メートルは車1台が通れる幅ということでしょう。救急車等の緊急車両が、家の敷地の中の建物の前まで入ることができるかという基準といえます。また、災害時の避難経路の確保、通風や排水といった衛生上の問題も考慮されています。

 

このため、周囲の状況や建築計画の内容から「交通上、安全上、防火上および衛生上支障がない」と認められ、許可を受けることができれば接道していない敷地での建築は認められます。一方、不特定多数の人が利用する施設の建物、ホテル、学校など一定の建築物については、地方公共団体が2メートルの接道義務では安全を確保できないと判断するときには、当該地方公共団体の条例により2メートル以上の接道を要求することができます。

 

この基準を満たさなければ住宅ローンの審査は通りませんし、「不動産の表示に関する公正競争規約」により、こうした土地の広告では「再建築不可」、「建築不可」と表示しなくてはなりません。

 

また、幅員4メートル未満の道路では、中心線から2メートルまでは建物などを新たに建てられないセットバックというルールがあります。道路の周辺の住民がこれを守り、将来的には幅員4メートルの道路としましょうという趣旨です。

 

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