「おしどり贈与の実行は慎重に」元国税専門官のアドバイス

「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

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自宅を「妻に売る」「妻にあげる」どっちがトク?

正解:婚姻期間20年以上なら、「自宅を妻にあげる」で特例あり

 

別名「おしどり贈与」と呼ばれている特例があります。これは、夫から妻に自宅を贈った場合に使えるもので、所得税ではなく贈与税の特例です。

 

そこで今回比較したのが、「自宅を妻に売る」と「自宅を妻にあげる」です。結論としては特例を使える後者が有利なのですが、くわしく解説していきましょう。

 

「おしどり贈与」の特例は、夫から妻に自宅を送った場合に使えるもので、所得税ではなく贈与税の特例だという。(※画像はイメージです/PIXTA)
「おしどり贈与」の特例は、夫から妻に自宅を送った場合に使えるもので、所得税ではなく贈与税の特例だという。(※画像はイメージです/PIXTA)

 

夫が妻に自宅を売ると、夫は所得税の確定申告で譲渡所得を申告する必要があります。一方、夫が妻に自宅をあげると、受け取った側の妻は贈与税の対象になるので、贈与税の確定申告が必要になります。

 

本来、所得税よりも贈与税のほうが、税負担が重くなるので、夫から妻に売ったほうが税負担が少ないと思われがちですが、そうではありません。

 

理由は、特例の存在にあります。この特例は、婚姻期間が20年以上の夫婦のあいだで、居住用不動産や、居住用不動産を取得するための金銭の贈与がおこなわれた場合、最高2000万円までの配偶者控除がつくというものです。

 

もともと、贈与税には年間110万円の基礎控除があるので、これらを合わせると、2110万円までの贈与が非課税になるという計算です。もし贈与額が2110万円を超えれば、超えた分に対して贈与税がかかります。

 

一方、妻に自宅を売った場合、こうした特例は存在しません。むしろ、第三者に売っていれば使えたはずの3000万円の特別控除や軽減税率の特例などが使えなくなってしまいます。これらの特例は、夫婦間や親子間の売買には使えないのです。

 

しかも、売却金額の設定によっては、夫に所得税がかかるだけでなく、妻に贈与税がかかる可能性があります。極端なケースですが、本来3000万円の価値がある自宅を100万円で夫から妻に売ったと想像してみてください。これは、ある意味で差額の2900万円をあげたのと同じですから、贈与税の対象になるということです。しかも、贈与税の対象になるのに、この場合は「おしどり贈与」の特例は使えません。

フリーライター

1981年、福岡県生まれ。西南学院大学商学部卒業。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。2017年7月、東京国税局を辞職し、フリーライターに転身。書籍や雑誌、Webメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、お金に関するセミナーも行っている。近著に『すみません、2DKってなんですか?』(サンマーク出版)がある。

著者紹介

連載「得なのはどっち?」難しい確定申告を分かりやすく解説

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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