「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

節税効果が期待できる住宅ローンを組んで新居に

ここで冒頭の設問に戻ります。じつは41の5には「新居を取得した年の12月31日時点で、新居について返済期間10年以上の住宅ローンがあること」という条件があります。つまり、賃貸に引っ越した人は使えないのです。

 

ただし、41の5を使えない人に向けた特例が別途存在します。これは通称「41の5の2(よんいちのごのに)」と呼ばれているものです。


 
41の5と41の5の2は、ひじょうに似ている特例なのですが、41の5にくらべて、41の5の2の使い勝手は大きく劣ります。残念ながら、41の5の2を活用できる場面はそう多くはありません。

 

基本的に、41の5と同様に、41の5の2にも損益通算と損失の繰越しという効果があります。

 

しかし、譲渡損失として認められる金額に上限があるという点が、大きなネックになっています。これは計算上のマイナスの全額が譲渡損失として認められる41の5とは大きく異なる点です。


 
41の5の2で損益通算ができる譲渡損失の限度額は、「マイホームの売買契約日の前日における住宅ローンの残高から売却価額を差し引いた残りの金額」と定められています。数字を当てはめて考えてみましょう。

 

たとえば、住宅ローンが3000万円残っている自宅が2000万円で売れたとします。譲渡損失は4000万円です。このとき、損益通算できる限度額は、3000万円から2000万円を引いた1000万円のみとなります。じっさいの譲渡損失は4000万円であっても、そのうち4分の1しか認められないわけです。

 

要は、41の5の2で損益通算や繰越控除が認められるのは、「売却代金を全額住宅ローンの返済にあてても返しきれない金額」ということです。ですから、売却代金で住宅ローンの残債を完済したような場合、41の5の2は使えないのです。

 

このように、41の5の2よりも41の5のほうが節税効果を期待できますので、賃貸に引っ越すよりは、住宅ローンを組んで新居に引っ越したほうがいいということになります。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年4月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

あなたにオススメのセミナー

    確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

    確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

    小林 義崇

    河出書房新社

    クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

    人気記事ランキング

    • デイリー
    • 週間
    • 月間

    メルマガ会員登録者の
    ご案内

    メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

    メルマガ登録
    TOPへ