節税効果が期待できる住宅ローンを組んで新居に
ここで冒頭の設問に戻ります。じつは41の5には「新居を取得した年の12月31日時点で、新居について返済期間10年以上の住宅ローンがあること」という条件があります。つまり、賃貸に引っ越した人は使えないのです。
ただし、41の5を使えない人に向けた特例が別途存在します。これは通称「41の5の2(よんいちのごのに)」と呼ばれているものです。
41の5と41の5の2は、ひじょうに似ている特例なのですが、41の5にくらべて、41の5の2の使い勝手は大きく劣ります。残念ながら、41の5の2を活用できる場面はそう多くはありません。
基本的に、41の5と同様に、41の5の2にも損益通算と損失の繰越しという効果があります。
しかし、譲渡損失として認められる金額に上限があるという点が、大きなネックになっています。これは計算上のマイナスの全額が譲渡損失として認められる41の5とは大きく異なる点です。
41の5の2で損益通算ができる譲渡損失の限度額は、「マイホームの売買契約日の前日における住宅ローンの残高から売却価額を差し引いた残りの金額」と定められています。数字を当てはめて考えてみましょう。
たとえば、住宅ローンが3000万円残っている自宅が2000万円で売れたとします。譲渡損失は4000万円です。このとき、損益通算できる限度額は、3000万円から2000万円を引いた1000万円のみとなります。じっさいの譲渡損失は4000万円であっても、そのうち4分の1しか認められないわけです。
要は、41の5の2で損益通算や繰越控除が認められるのは、「売却代金を全額住宅ローンの返済にあてても返しきれない金額」ということです。ですから、売却代金で住宅ローンの残債を完済したような場合、41の5の2は使えないのです。
このように、41の5の2よりも41の5のほうが節税効果を期待できますので、賃貸に引っ越すよりは、住宅ローンを組んで新居に引っ越したほうがいいということになります。
本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年4月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。
小林 義崇
フリーライター 元国税専門官
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