人間には誰しも「社会の一員としてみんなと同じ行動をとりたい」心理があります。しかしそれと同時に「人より少しだけ優れていたい」という感情も抱いているのです。その心理的な揺れを利用するだけで、他人に与える影響力は大きく変化します。メンタリストDaiGo氏が、人間関係で優位に立つ方法を解説します。※本記事は、『超影響力~歴史を変えたインフルエンサーに学ぶ人の動かし方』(祥伝社)より抜粋・再編集したものです。

印象テクニック③:ゴールを掲げる

 ●ゴールを見せると人は安心して行動し始める 

 

「関係性の強調」を実現する3つ目のテクニックは、「ゴールを掲げる」です。

 

人は、仕事の成果基準が不明確な職場で働くとき、幸福度が下がります。また、将来のことを話し合わないままの恋愛や同棲(どうせい)生活は、どこかで一緒にいる意味を見失います。

 

一方、たとえ行き先のわからない旅であっても、ミステリーツアーというテーマが掲げられていると、不安だけでなくワクワクした気持ちも湧いてきます。

 

人は生活のどんな場面でも一定のゴールが見えているほうが、やるべきことが明確になり、安心して行動を起こせるのです。

 

「この意見の支持率は高い」と「みんなと少し違う要素」に加え、聞き手に対して「ゴールを掲げる」と、話し手は影響力を高めることができます。なぜなら、ゴールが見えることによって話の内容と聞き手の関係性がさらに強調されるからです。

 

ただし、この仕組みをうまく機能させるには、ゴールが聞き手にとって魅力的なものである必要があります。では、どんなゴールを掲げると、関係性が強調され、行動を後押しするのでしょうか。

 

アリゾナ州立大学のノア・J・ゴールドスタイン博士が提唱する「ユニバーサルゴール」という考えが参考になります。これはゴールドスタイン博士が「社会的影響力」に関する200以上の文献をレビューし、分析したものです。

 

 ●聞き手が自ら動き出す3つのゴール設定 

 

「ユニバーサルゴール」には、聞き手に影響を与える原動力が異なる3種類のゴールがあります。関係性を強調するための使い方を説明する前に、3つのゴールについて簡単に紹介します。

 

 ★ゴール設定1:アフィリエーションゴール 

 

「アフィリエーションゴール」のアフィリエーションは、「所属」という意味で捉えてください。

 

人は自分の行動や思考や信念が、その他の多くの人と一致していたいと願います。どんなに独自性を貫こうとしている人でも、心のどこかで社会の一員として誰かと同じ行動、思考、信念を共有していたいという欲求を持っているのです。

 

たとえば、ピコ太郎さんの「PPAP」は世界的な流行になりました。その発端はジャスティン・ビーバーさんが彼のフォロワーに「おもしろい」と紹介したからです。その結果、「ジャスティン・ビーバーがおもしろいって言っているものをおもしろいと思いたい」という人たちが動き、ピコ太郎さんの「PPAP」は爆発的に拡散していきました。

 

この拡散を支えた多くの人の原動力となったのが、アフィリエーションゴールです。

 

好きな著名人のコミュニティに所属していたい、という思いが彼らの行動を促しました。そして、この力を利用できるのは著名人だけではありません。

 

「時間の余裕を第一に考える価値観を追求してみませんか?」

 

「新しい仕事の仕方を取り入れて、効率を上げていきたくはないですか?」

 

「まずは稼ぐ力を磨くこと。そこに1つの正義があると思いませんか?」

 

たとえばこんなふうに、多くの人が心惹かれるアフィリエーションゴールを設定して語りかけることで、あなたも「所属したい」と望む人を集め、身近なコミュニティに影響力を発揮できるようになります。

 

人は誰かと同じ行動、思考、信念を持っていたいと願うからです。

 

 ★ゴール設定2:アキュラシーゴール 

 

「アキュラシーゴール」のアキュラシーは、「正確性」です。

 

人は「自分が正しく行動している」「多くの人が賛同する目標に向かっている」「計画通りに進んでいる」など、自分の行動に正確性を求めます。

 

ネットの世界で「正論」がバズりやすいのも正しい物事の見方、間違った出来事を正す言葉を直感的に支持してしまう人が多いからです。

 

アキュラシーゴールには、そうした「正しさへの欲求」を満たすゴールを示します。

 

「あなたの100円の寄付で、5人の命を救うことができます」

 

「高齢者による不幸な事故を減らすため、積極的な免許返納を」

 

「チケットからマスクまで、利ざやを稼ぐ転売ヤーを締め出そう」

 

このように、多くの人が「その通り!」と思うゴールを設定することで、聞き手の心にある種の爽快感が生じます。そして、その聞き手が「アキュラシーゴールに向かって行動するのは多くの人の支持を得られることだ」と理解することで、行動力が高まるのです。

 

このアキュラシーゴールを巧みに使っているのが、選挙戦における政治家です。

 

わかりやすいのはアメリカの大統領選挙。ドナルド・トランプ前大統領は2016年の大統領選挙で「Make America Great Again.」というメッセージを発し、多くの支持者を集めました。「アメリカはグレートであるべき」「グレートなアメリカを復活させる」と。

 

支持者にとって自分の国がグレートになるのはすばらしいことで、そのために選挙活動に加わるのは正しい行動だと感じられるわけです。

 

ちなみに、トランプさんの1代前のバラク・オバマ元大統領のキーフレーズは「Yes We Can.」でした。正しさを感じさせるキャッチコピーはアキュラシーゴールとして機能して、大きなうねりを生み出すのです。

 

 ★ゴール設定3:ポジティブセルフコンセプトゴール 

 

「ポジティブセルフコンセプトゴール」のポジティブコンセプトとは、「一貫性を保ちたいという欲求」です。

 

これは「一貫性の原理」と呼ばれる心理で、人は自分が選んだもの、やると決めたもの、おもしろいと感じたものなどの価値を重視します。なぜなら、自分の判断は正しかった、賢く選んだ、やる意味があったと信じたいから。下した決断を将来に向けて一貫していきたいと考えるのです。

 

こうした心理を実証した有名な実験があります。

 

実験では研究チームのメンバーが交通安全ボランティアと称して一般家庭を訪問。

 

「お宅のお庭に交通安全のメッセージが書かれた立て看板を設置させてください」と依頼をします。しかし、看板は庭の景観が損なわれるほどの大きさで、デザインはいまいち。庭に立てたいと思える代物(しろもの)ではありません。当然、最初に「看板を設置させてください」と言って回った時点での承諾率はわずか17%でした。

 

続いて研究チームのメンバーは、「一貫性の原理」に沿った提案を行ないます。

 

「交通安全ボランティアに協力していただけるご家庭を探しています。このシールをお家のどこかに貼っていただけませんか?」と、交通安全の標語が書かれた小さなステッカーを配って回ったのです。

 

そしてその2週間後、ステッカーを受け取ってくれた家庭を再訪し、「お宅のお庭に交通安全のメッセージが書かれた立て看板を設置させてください」と頼むと、承諾率は75%にまで跳ね上がりました。

 

これはまさにポジティブセルフコンセプトが働いたからです。

 

小さなステッカーを受け取り、交通安全への賛同を示した人は自分の選択や意志の一貫性を守るため、大きくてダサい看板を設置するのも受け入れてしまうわけです。

 

 

実は「この意見の支持率は高い」と「みんなと少し違う要素」によって関係性を強調し、聞き手が何らかの行動を起こした場合、すでにその時点でポジティブセルフコンセプトゴールは機能し始めています。

 

あとは話し手であるあなたが聞き手に「一度決めたことをやり抜く気持ちはすばらしいですね」「信念を貫く姿勢は多くの人の信頼を集めるはずです」など、ポジティブセルフコンセプトを称賛する言葉を送りましょう。

 

それだけで聞き手は「改めて一貫性を保とう」と、強く影響を受けます。なぜなら、自分は筋の通った生き方をしている、と自信を深めていくからです。

 

◆ポイント◆
「関係性の強調」をしたいときは、誰もが持つ「社会の一員としてみんなと同じ行動、思考、信念を共有していたい」という欲求をくすぐると効果大。

 

 

メンタリストDaiGo

 

 

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歴史的に紐解くと、メンタリストというのは、元々は欧米において政治家のブレーンとして、演説の原稿を用意し、話し方や身振り手振りの効果的な活用法をアドバイスし、大衆の心を動かす伝え方の手助けをしてきた存在でした。 …

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