企業による「小規模保育所」運営ビジネス…開園までのスケジュール管理と行政との交渉(3ヵ月前~1ヵ月前)

企業による「小規模保育所」運営ビジネス…開園までのスケジュール管理と行政との交渉(3ヵ月前~1ヵ月前)

企業による保育園ビジネス参入には、事業多角化による経営安定や子育て世代の女性従業員の定着など、数多くのメリットがあります。では実際に保育園事業へ参入・小規模保育所の経営を実現する場合は、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。ここでは、保育所開園3ヵ月前~1ヵ月前に必要な手続きを詳述していきます。

 

●オープンの2ヵ月前までに、保育所の内装を完成させる

 

オープンの2ヵ月前までには、内装をしなければなりません。最終的なオープン許可が出るのは、内装がすべて終わり自治体の職員が現場を確認してからです。設計図どおりの間取りか、設備が準備されているかなどがチェックされます。

 

ですから、6ヵ月前の事前協議の段階で許可が下りそうだと判断したら、設計を同時進行で進める必要があります。そして、4ヵ月前くらいまでに設計が完了していなければ間に合いません。

 

このときトラブルになりやすいのが保育室の面積です。設計図に示されている部屋の面積は壁の中心から測ったものです。しかし、実際の保育室では有効面積で計測します。壁芯で測った場合には壁の半分の厚さまでが含まれてしまうので、有効面積が足りないことが起こり得ます。

 

保育所の建物が一般の建物と違う点にはコンセントもあります。一般の住宅についているようなコンセントではなく、必ずカバー付きのものを設置します。

 

子どものいる家庭向けにコンセントに差し込んでカバーをするものが販売されていますが、「子どもがカバーを外して鉛筆を差し込んだら感電する」と指摘されます。実際にそのようなことが起こるとは思えませんが、そこまで徹底的にチェックをされるのです。

 

壁紙にも注意が必要です。保育所に使用する壁紙にはすべて防炎マークがついていなければなりません。ロールスクリーンやカーテンを設置する場合も同様です。

 

経費を安く抑えるためにホームセンターなどで自ら購入して設置をしようとするケースがありますが、それは認められません。保育所内に使う布製の製品にはすべて「防炎マーク」が必要なのです。また、扉の鍵は子どもの手の届かないところにつけます。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)

 

このように特殊な事情が多いので、やはり保育所を建築したことがある業者に依頼しないと、思わぬところで許可が下りないということが生じてしまいます。自治体の確認の際に工事のやり直しを指示されると、実際に修繕をして再度確認をするまでは許可が下りません。予算も時間も余計にかかりますので注意が必要です。

 

●給食を提供するなら、自治体の規定に沿った調理設備が必要

 

未満児の給食は「自園調理」が基本です。連携施設からの搬入も認められていますが、これは院内保育園など、同じ建物内にある調理設備を想定していると思われますので、給食業者を連携施設にして、給食業者に搬入してもらうということはできません。

 

したがって、給食を調理するための設備が必要です。設備のポイントは職員にも提供するかどうかです。筆者たちの保育園では、休憩が自由なので、元々、給食の要望が少なく、提供を取りやめました。給食は1回の提供数が一定数を超えると保健所で営業許可を取得する必要があります。

 

12人定員で子どもの分だけであれば、営業許可は必要ありませんが、職員の分が入ると、取得の必要が出る可能性があります。

 

営業許可を取得するには、それなりの設備が求められます。筆者たちの保育園では、通常、家庭用キッチンと大差ないものです。つまり、保健所の許可が下りるほどには対応していないのです。職員にも給食を提供する場合には、その点も考慮しておく必要があります。保健所の許可を取得するには、2層タンクや調理員専用の手洗い場、場合によっては調理員専用のトイレなども必要になってきます。

 

小規模保育所の設備基準については、自治体ごとに異なります。それは、標準よりも緩和されるというよりも、その自治体独自の基準が追加されることが一般的であり、都市部のほうが基準が厳しい場合が多いので注意してください。

 

 

河村 憲良

株式会社Five Boxes 代表取締役

 

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