高齢化、人口減少…昨今、マンションを取り囲む状況は極めて厳しいものになっています。大阪経済法科大学経済学部教授の米山秀隆氏の書籍『限界マンション 次に来る空き家問題』(日本経済新聞出版社)より一部を抜粋・編集し、マンションの建て替えの問題点を解説していきます。

「建て替え問題」新しいマンションほど…

一方、デベロッパーとの共同事業は、マンション建替え円滑化法の枠組みで行われる場合もある。建て替え組合を設立するに際し、デベロッパーが参加組合員となり、マンションの土地持ち分を取得する、または組合の保留床を買い取ることでデベロッパーがその対価として組合に資金を拠出するという形である。

 

このように、円滑化法により組合が事業を実施する場合でも、実際には、デベロッパーと協力して保留床を売却する形で、事業費の大半を賄っているケースがほとんどである。

 

初期に建築されたマンションのうち、敷地や床面積に余裕を持って建てられていたものについては、建て替え後には増床することが容易にできたため、デベロッパーとの協力によって建て替えを行うことができた。

 

老朽化したマンションでは、大がかりな改修をして住み続けるよりは、デベロッパーとして協力して建て替えるほうが、住民にとっては、追加負担なしでしかも新しい建物に住み替えることができるというメリットがあったため、大改修よりは建て替えが選択されるという場合が多かった。

 

しかし、マンションの建築時期が新しくなればなるほど、敷地や容積率に余裕がなくなっているため、現在ではこのような方式での建て替えは次第に困難になりつつある。

 

■デベロッパーの協力はビジネス

 

このように、現実にはデベロッパーなどの協力が得られなければ、建て替えは難しい状態になっていることがわかる。

 

デベロッパーにとっては、当然のことながら、建て替え後には、保留床を分譲するなどの何らかのビジネス上のメリットが得られなければ、建て替えには協力しにくいということになる。言い換えればデベロッパーは、一定の利益が期待できる限りにおいて、事業リスクを負担して建て替えに参加する。

 

しかしその際、当然のことではあるが、デベロッパーの意思決定は、老朽化が著しく建て替えなければ生活に支障を来すなどという住民側の事情とは無関係である。デベロッパーは善意で建て替えに協力するわけではなく、すべての老朽化マンションがデベロッパーの要求水準を満たすわけではない。

 

デベロッパーの協力が得られなければ、住民が自力で建て替えを行うしかないが、その場合には資金面の問題のほか、誰が事業のリスクを負って、建て替えを進めるかという深刻な問題が生じる。

 

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限界マンション 次に来る空き家問題

限界マンション 次に来る空き家問題

米山 秀隆

日本経済新聞出版社

進む、建物の老朽化と住民の高齢化。 老朽化マンションの放置・スラム化は不可避なのか? マンションは終の棲家にならないのか? ▼老朽化したマンションの末路は、スラムか廃墟か。居住者の高齢化と建物の老朽化という「2…

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