多くのマンションに共通する「合意」問題
江戸川アパートメントのケースは、早くから建て替えの話が持ち上がりながらも、高い還元率によって建て替えられる物件ではなく、また、そうであるがゆえに、住民の間にも、修繕して使えるうちは、大きな負担をしてまで建て替えに踏み切るという踏ん切りはつかなかった。
しかし、さすがに築70年に近づき、老朽化の度合いが激しさを増して危険な状態となった。住民も二代目に代替わりして、自分たちの代で建て替え問題に決着をつけておかなければならないという切迫感が高まって、ようやく建て替えに踏み切ることができた。
江戸川アパートメントは当初からコミュニティ作りを重視したマンションであったが、そうしたマンションでも負担の生じる建て替えの合意形成に至るまでの道のりは、決して平坦なものではなく、建て替えの検討開始から30年もの長きの時間を要した。
また、建て替え決議後は、建て替えの非同意者に対し、売り渡し訴訟を提起する必要も生じた(最高裁まで争い、非同意者の上告が棄却された)。
江戸川アパートメントのケースは、合意形成の難しさ、非同意者への対応(訴訟提起を覚悟しなければならないこと)、デベロッパーのインセンティブ確保(低い還元率の受け入れ)、建て替え後に戻りたくても戻れない人への対応など、今後の多くのマンションが建て替えに際して共通して直面すると考えられる問題を含んでいる。
米山 秀隆
大阪経済法科大学経済学部教授
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