ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

同居であれば、要介護5であっても在宅介護が可能

在宅介護は今後増加傾向となる

 

今、日本は「介護は在宅で」という考えにシフトしています。高齢者人口が増えるからと、入居型施設をたくさんつくっても、いずれ供給過多となるときがきます。介護が必要になっても自宅で住み続けることを支援する環境(地域包括ケアシステム)が必要で、すでに、その地域に住民票がある人を主な対象にした地域密着型サービスが広がっています。このサービスを利用すれば、同居であれば、要介護5であっても在宅介護が可能となります。

 

在宅介護の救世主=小規模多機能型居宅介護

 

在宅介護を希望すると、ケアマネージャーがサービス計画書を作成します。ですが、訪問介護、通所介護、短期入所(ショートステイ)など利用サービスごとで事業所が変わるのが通常です。通所介護は、Aデイサービス事業所、短期入所はB特別養護老人ホームなど、複数の施設職員に関わるのは親も家族も負担が大きくなります。

 

私が働きながら在宅介護を続けられる一番の理由は小規模多機能型居宅介護施設と契約をしたことです。自分の生活に合わせたものを選ぶことができたということが大きな理由だと思っています。

 

ここは、訪問(訪問介護のイメージ)・通い(デイサービスのイメージ)・泊まり(短期入所・ショートステイのイメージ)が同じひとつの施設で受けられ、同じ職員がお世話してくれるため親も安心ですし、家族にとっても窓口が一本化され単純明快です。送迎時間、急な泊まりにも比較的フレキシブルに個別相談にのってくれます。

 

在宅介護をしようと決めたなら小規模多機能をまず検討! ちなみにわが家の利用は、月曜日から金曜日の平日は、迎えが7時15分で送りが19時20分です。土日は基本的に休みで泊りは月1回でお願いしています。勤務時間に合わせて利用ができ、とても助かっています(※要介護1のときは、週に3日、要介護3で週に5日利用に変わりました。迎えの時間も9時から始まり、徐々に早くなりました。当初から今のようなスケジュールではなく年月を重ねて現在に至っています)。

 

事業所に家の鍵を預ける勇気はありますか

 

在宅介護の場合、介護サービス事業所に合鍵を預ける必要性が出てくることがあります。実は、小規模多機能型居宅介護の利用初期の頃、私はお迎えの時間に自宅にいながらリビングで悪意なく、うたた寝をしていました。そんなことを知らない施設の職員は鍵を開けて母の部屋にそのまま入り、優しく声をかけて母を連れ出しました。

 

ですが、その方が特別良い方なのかもしれません。数日後、故意に隣のリビングに再度、息を殺しながら潜んでみました。別の職員でしたが、同じようにテキパキと数分で事はすみました。隠れるなんて卑怯でしょうか? 考えてみてください。白バイ、覆面パトカーだって隠れているではありませんか。そして、何かあったら御用! それと一緒です。安心ができ、100%事業所を信頼することができれば、結果オーライだと思うのです。

 

メリットとデメリット

 

小規模多機能型居宅介護は利用料が要介護度に応じた定額制です。利用が少ないと元が取れずデメリットになりますが、私は費用のめども立ち、且つサービスにも満足なので定額制をメリットと受け止めています。1日の利用定員が決まっているため譲り合いも必要となり、利用者数や身体状況によって差が出やすいというのは事実です。

 

ですが、小規模多機能型居宅介護の良いところは、介護職員も家族も本人も仕事とプライベートが比較的明快で、ずっと一緒にいないこと、関わる人すべてに帰る家があることです。介護サービスの中でも小規模多機能型居宅介護の職員は虐待が一番少ないと聞きました。介護者も仕事をして、趣味、自己啓発もすることは悪いことではありません。人に任せる勇気も必要です。自分のしたいことを諦めないで是非、近くに地域に密着したサービスがないか探してみてください。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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