ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

食事や入浴、排せつを自分できなくなったとき

施設入居を検討するとき

 

介護者の体調、仕事上の問題、また家の立地条件から在宅介護が難しい方もいるでしょう。離れて暮らす親に火の始末や徘徊などで、ご近所に迷惑をかける行動が目立ったときは施設検討の時期です。また、親子関係が複雑であるとか、関係が良くても親の介護が難しい、と拒否したい方もおられるでしょう。そんな状況であるならば、最初から施設入居を選択した方が賢明です。

 

24時間完全介護の施設に入居すれば、衣食住に関する介護の負担は大幅に削減されます。無理して在宅介護をして万が一ですが、虐待や介護殺人になっては不幸すぎます。施設=介護放棄ではありません。家庭により選択が違うというだけです。

 

高齢になると身体機能が低下し、転倒リスクが高まるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
高齢になると身体機能が低下し、転倒リスクが高まるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

日常生活の危険サイン

 

食事や入浴、排せつや着替えなど、日常生活に必要なことを親は自分自身で行えていますか? 高齢になると温度に無頓着になり、リモコン操作の冷房と暖房を間違えても、気が付かないことがあります。夏に暖房、冬に冷房など私たちはすぐに間違いに気づきますが、そうはいかないのが高齢者。また、掃除、洗濯も行き届かず、食器も洗われずにシンクに溜まっていることもあります。

 

栄養管理や水分補給も大切ですが、そんな状況では確実にどうでも良いことになっているはずです。不衛生にしていると、害虫が寄ってきます。火の始末は命にも関わります。親の様子が明らかにだらしなくなってきたら要注意です。

 

 

外出時の危険サイン

 

通いなれた道であれば帰れる確率は高くても、横道に入った途端に戻れなくなることもあります。道に迷うことが多くなったら要注意です。警察から保護の連絡がきたのなら、その時点で在宅は難しいと考えてください。

 

知り合いで川崎が自宅なのに、親が池袋で見つかったという例があります。本人はどうしてそこにいるのか説明ができません。川崎から池袋まで、実は経路って沢山あります。最短のルートを使っているとは限らないのです。まだ首都圏内で発見されたから良かったものの、大阪まで行っても不思議ではありません。その後、その家庭は、在宅は限界と判断し、特別養護老人ホームに入居されています。

 

医療の危険サイン

 

定期的に通院ができていますか? きちんと薬が飲めていますか? 通院忘れや薬の飲み忘れ、反対に一度に沢山飲んでしまうなど病状によっては命に関わります。医療面で必要なことが自分でできているかも大切な要素です。家族が毎日管理できれば良いのですが難しいと思います。

 

訪問介護を毎日、服薬の時間にお願いするというのも合理的ではありません。定期的な医療に関する管理が必要な場合は、場合により施設の方が安心でもあります。

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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