子どもが減り続ける日本において、保育園がビジネスとして注目される機会は多くありません。しかし現実は、共働き世帯増加による保育園需要は依然として高く、潜在的なビジネスチャンスを秘めているといえます。経営者の中には本業の安定を目的とした多角化経営の一環として、あるいは地域貢献として、保育園ビジネスに乗り出す人も増えています。保育園ビジネスの実情を探ります。

「夫婦共働き」が定着し、ニーズは幼稚園から保育園へ

待機児童問題が広く認識されたことで、保育事業に世の中の注目が集まっています。しかし、保育をビジネスととらえた場合に心配されるのが「少子化なのに将来性があるのか?」についてです。確かに、日本で1年間に生まれてくる子どもの数は1974年から減少を始め、現在は、筆者が生まれた1976年の約183万人に対し、2019年は約86万人と半分以下になってしまいました。

 

この数値だけですと、いかにも子ども関連ビジネスには将来性がないように思えます。しかし、保育業界の未来像は必ずしも悲観するものではありません。

 

その理由の一つとして考えられるのが社会の変化です。筆者は、元々は学習塾で起業し、現在も大学受験の大手予備校のフランチャイズを運営しています。そこでみられるのが、女子生徒の高学歴化です。筆者が高校3年生だった1994年の女性の大学進学率が21%だったのに対して、2018年の女性の大学進学率は50%を超えています。

 

「高校を卒業して、地元の企業に就職し、20代前半で寿退社、育児をしながらの専業主婦」という昭和のイメージは過去どころか化石のような存在です。厚生労働省の2018年の雇用動向調査によると退職理由が「結婚」である女性の割合はわずか1.7%しかありません。

 

共働き世帯にとって預かり時間が短く長期休みがある幼稚園は利便性が高いとはいえません。実際に、文部科学省の学校基本調査の幼稚園就園率は1976年が64.0%に対して、2019年では42.6%になっています。もちろん、これは幼稚園だったところが幼保連携型認定こども園などに移行していることもありますが、それでも幼稚園就園率が減少傾向にあることには変わりません。

 

つまり、社会のニーズは、幼稚園から保育所へシフトしています。この流れは未満児保育の利用率の上昇から考えても、今後、加速することが予想されます。いまから幼稚園や幼児教室を始めるというなら少子化は大きな問題ですが、保育所であれば利用率は増加傾向にありますから将来性は高いでしょう。

 

なお、世間では「〇〇保育園」という看板を掲げる施設がたくさんあり、筆者が運営する保育所も「りんご保育園」という名称ですが、「保育園」という名称は「幼稚園」との対比から生まれた通称であり、法律上は「保育所」となります。本記事では、現場をイメージしてほしい場合や通称表現のほうが分かりやすい場合に「保育園」を使用しています。

 

新規参入するなら「認可外保育施設」での開業は避ける

以前は、保育所を新設するハードルが高いこともあり、「認可外保育園」や「無認可保育園」で開業されるケースも多かったと思います。

 

認可外保育施設は、その名のとおり、自治体の認可を受けていない保育園の総称ですが、勝手に運営していいわけではありません。認可外保育園に対しても「認可外保育施設指導監督基準」が設けられ、開業時にも都道府県への届け出が必要です。

 

保育所そのものが不足していた時代であれば、認可外保育施設も選択肢の一つだったかもしれません。仮に30人定員の認可外保育施設で考えると、2019(令和元)年度の公定価格表によると16/100地域の認可保育所の4歳児以上の基本分単価は6万9680円です。

 

認可保育施設だからといって収入が高いわけではありませんし、認可保育所には保育室以外にもさまざまな設備が必要です。その点、認可外保育施設は設備に対する基準は認可保育所よりも緩和されているので参入しやすい事業といえます。

 

一方で人員配置基準はというと、認可保育所も認可外保育施設もほとんど変わりません。認可外保育施設が保育者の3分の1以上が保育士または看護師の資格を有する者となっていますが、1人でお世話できる子どもの数は決まっているのです。4歳児以上であれば、1人で30人までお世話できるので、月5万円の保育料を徴収したとしても1人の保育者で月商150万円です。

 

保育料無償化の影響を受けて、認可外保育施設でも基準を満たせば助成金が受け取れることがありますから、事業性は十分あると思います。しかし、未満児だと、1、2歳児で6人まで、0歳児であれば3人までしかお世話できません。いくら助成金があったとしても、人件費すら捻出は難しいでしょう。

 

健全な運営という観点で、筆者は認可外保育施設での開業をお勧めしません。

 

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安定収益と社会貢献を両立する小規模保育園経営

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河村 憲良

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