ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

入院時は毎日夕食後、睡眠導入剤を服用

夜な夜な続く独演会

 

母はもともと無口なタイプではないのですが、一時期、夜中ずっとひとりで話をしていました。笑ったりもしているので、幻覚で見えている人と話をしているのでしょうか。その後、手術と入院を繰り返し認知症が一気に進んだとき、言葉がなくなりました。

 

独語も困るけど話さないのはもっと心配です。そのときの主治医から「独語でも良いから、話をしていた方が何かと活性化されるよ」と言われたことを思い出します。最近はまた独り言が増えて安心しています。

 

独語は不安や苦痛が原因だから取り除こうとか教科書的な回答もあるかもしれませんが、そういう情報に振り回されず親本人が自然体でいるのが一番です。夜の独語は寝ていないのでは、と心配になりますが、そこは自由な身分、昼間の居眠りなどで結構長い時間、睡眠をとっている場合も多いのです。

 

エピソード

 

要介護3、母に昼夜逆転がよく起こったのはこの頃です。隣の部屋から、朝の5時くらいまでずっと独語が呪文のように聞こえてくるのです。何を話しているのかはわかりません。なにをそんなに話し続けることができるのか不思議です。止めようとしても無理。下手に部屋に入っていこうものならエスカレートするのです。

 

母は小規模多機能に昼間は行くのですが、その連絡帳に昼寝しましたとは書かれていません。認知症は3日くらいなら、徹夜でも大丈夫な人がいるのは事実です。誰にも迷惑をかけないならまぁ良いかな、というのが私の正直な気持ちです。

 

脳外科の先生に質問をしたら、「話さないより話した方が良いですよ。言葉が出るのは良いですよ。話させておけば良いのではないですか」と言われ、とても気が楽になりました。それからは、BGMだと思って私も気兼ねせず寝ることにしたのです。

 

入院時は毎日夕食後、睡眠導入剤を服用していました。病院も夜勤体制なので認知症の高齢者が騒ぎ出すと大変なのでしょう。この悩みを重く受け止めて相談していたなら、数日分は睡眠薬を処方してもらえたかもしれませんが、わが家は、自然とそのままにしていました。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

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渋澤 和世

プレジデント社

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