ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

笑顔が出るのなら、気分が良い証拠

錯覚を明らかに超えている幻覚

 

高齢になると認知・身体機能の低下や不安から幻覚が出てきます。私の母には大好きだった母親(私の祖母)が見えているようで「お母ちゃん」とたまに涙を流します。興奮して手がつけられないのは困りますが、多くは時間がたてば落ち着きます。振り回されずに、「へぇ見えるの」「へぇ聴こえるの」と否定も肯定もせず、話を合わせていれば良いのではないでしょうか。

 

母は地獄耳で悪口には鋭いです。本当に言ったことを聞き逃さないのはアッパレです。イライラして放った言葉に「誰が、訳がわからんやつだって」と激怒します。怒ってもすぐに忘れてくれるのですが……。これは私の気のせいかもしれませんが、うまく幻覚と現実を使い分けているように思えてきます。

 

入院時は毎日夕食後、睡眠導入剤を服用していたという。(※写真はイメージです/PIXTA)
入院時は毎日夕食後、睡眠導入剤を服用していたという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

作り話と同じ話は武勇伝

 

大体が自分の自慢や楽しかった話を、大げさにしながら何回も話します。笑顔が出るのなら、気分が良い証拠。どんどん話してもらいましょう。高齢者施設でも男性は仕事の成功話、女性は自分や子どもの自慢話を毎回のように話してくれます。

 

母は小学生のとき、優等生賞状を毎年もらったという話が定番です。同じ話を何回聞いても、自分に余裕があればイライラしません。イラつくのは何かに追われるなど、心も時間も余裕がないときです。それならば、その場を静かに立ち去った方がお互いのためかと思います。

 

暴言吐かれた、一緒に怒ろう

 

若い頃は制御がきいて、ある程度、忍耐・理性というものがあっても高齢になると良い意味で自分の気持ちをストレートに表現できるのですね。

 

排便介助の際、「このバカたれ。あたしゃ、帰らせてもらうよ」と便を触りながら暴言を吐いて、汚い手で叩かれたらどうでしょう? 高齢者だから敬意をなんて無理な話です。これは、普通に人として失礼な行為です。ここは、家族なら対等に怒っても良いのではないかと思うのです。

 

よくある例で、お金を盗られた、愛人がいるなどの被害妄想が出たとき疑われて悪者になるのは一番世話をしている身内です。怒りたいときは一緒に怒って、無理に我慢をしないでください。

 

母は他人に爆発することはなく、身内にはストレートに言葉や態度で表します。何でも言いやすい、この人なら許してくれるのがわかるのです。ここは、家族の良いところでも難しいところでもあります。

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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