競争社会となり、帳簿さえ付けていればそれなりに経営が続けられた時代は終わりました。今回は、そんな時代を生き抜くために重要な「会計」の基本知識について見ていきます。

経営戦略は決算書が読めないと立てられない

会計という言葉は「会社のことを計算する」から生まれました。会計の基本は、帳簿付けや簿記です。帳簿付けや簿記は法律や条例などで決められた制度や基準にもとづいて行われるため、専門的には「制度会計」と呼ばれます。「制度会計」に対して使われるのが、「管理会計」です(「経営会計」と呼ぶ専門家もいます)。

 

きちんと帳簿さえ付けていれば、それなりに経営が続けられた時代もありましたが、競争社会になった現代では、単純に帳簿を付けているだけでは生き残れません。帳簿の数字から“意味”を読み取り、「どうすれば経営が維持・発展できるか」を考えなくてはいけない時代になったのです。

 

経営者にとって管理会計は大事です。ただ、そのベースとなる制度会計が分かっていないと、そこから意味を読み取ることはできず、経営戦略を立てることもできません。そこで読者の皆さんには、帳簿つまり決算書が読めるようになっていただきたいと思います。

会計の絶対的ルールは「数量×単価=金額」

会計の基本は、「収入と支出」です。この差額が利益になります。商品やサービスを売って入ってくるお金が「収入」、商品やサービスを売るためにかかる費用が「支出」です。そして、収入から支出を差し引いた金額が利益です。収入より支出が少なければプラスの利益(黒字)になり、収入より支出が多ければマイナスの利益(赤字)になります。

 

さて、会計の考え方はとてもシンプルで簡単です。今月の売上がいくらか、かかった費用(経費)がいくらかなど、金額の裏には必ず「数量×単価=金額」という等式があります。100円の商品を50個売れば、売上は50個×100円で5000円。1つの商品を作るのにかかる経費(材料費や人件費など)が50円なら、50個作るのには、50個×50円で2500円。すると、利益は5000円−2500円で2500円となります。

 

利益を大きくするには、入金を多くするか、支出を少なくするしかありません。入金額を多くするには営業を頑張って50個より多く売るか、100円で売っていたものに付加価値を付けて100円より高く売ることになります。支出を少なくするには材料の仕入値や人件費などの単価を下げるか、あるいは、少ない材料や人員で同じ数量の商品を生産するかになります。

 

次回は、具体的な決算書の読み取りを見ていきます。

本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『低成長時代を生き抜く中小企業経営9カ条』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

低成長時代を生き抜く 中小企業経営9カ条

低成長時代を生き抜く 中小企業経営9カ条

真下 和男

幻冬舎メディアコンサルティング

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