前回は、しまむらの高収益を支える「仕入型ビジネス」の事例を解説しました。今回も引き続き、しまむらの事例から、パート社員がなぜ優秀なのか、従業員を育てるそのシステムについて見ていきます。

パート率が80%を超える「しまむら」

しまむらの運営の大きな特徴に「パート率の高さ」があります。もともと流通業界は他業界に比べてパート比率が高いですが、しまむらは80%超と突出しています。ただし、これは人件費削減を狙ったものではありません。

 

しまむらの社長いわく「優秀な人材を採用したら、たまたま主婦層のパートが多くなっただけ」と。地方都市の小商圏という立地のために、働き手の募集で集まったのが主婦層だったようです。

 

しまむらのパート社員をさらに優秀にしているのが、待遇面の良さです。しまむらではパート社員にも勤務評定があり、ボーナスや退職金が支給されるなど正社員との待遇格差を極力少なくする配慮がなされています。

 

これは「顧客や株主より従業員を第一の優先順位に置く」という、しまむらの理念に基づいています。パートも正社員も区別なく、それぞれの機能を分担することで、各人の能力が最大限に発揮されるのです。

実態に即した「マニュアル」で日々の業務が改善

パートを戦力として活用するためには、マニュアルでの管理が有効です。マニュアルを徹底することでパート社員への教育が行き届き、質を一定レベル以上に保つことができます。

 

しまむらのマニュアルは毎月更新され、3年経つと内容がまったく違うものになっていることもあります。随時アップデートしていくことで実態に即したマニュアルとなり、日々の業務がより良いものに改善されていくのです。

 

こうして大切に育てられたパート社員の中からは、正規雇用されて店長を任される者も出てきます。しまむらの店長の6割近くはパート出身者です。パートやアルバイトというと「短期雇用」「使い捨て」というイメージがありますが、しまむらではむしろ逆です。

 

「大事な戦力」「組織の構成員」という認識で育ててもらえるがゆえに、パート社員は会社への恩返しをしたくなります。彼らが「この会社のために役立ちたい。自分にもっとできることはないだろうか」と考え、自主的に行動することで、現場はより活性化していきます。

 

「人を育てること=会社を育てること」だということが、しまむらの例を見るとよく分かります。

本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『低成長時代を生き抜く中小企業経営9カ条』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

低成長時代を生き抜く 中小企業経営9カ条

低成長時代を生き抜く 中小企業経営9カ条

真下 和男

幻冬舎メディアコンサルティング

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