高成長は幻想に過ぎない…新たな時代の「追いつけ追い越せ」は

「GDPはアメリカに都合良く考案された指標であるという問題を抱えている」と山口周氏は指摘します。そして経済成長は、21世紀初頭に人類史的な変曲点を迎え、「アメリカに追いつけ追い越せ」とアメリカを目標にしてきた日本人は今こそアメリカに追従しない新たな社会ビジョンを構想するときだと提言します。※本連載は山口周著『ビジネスの未来』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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アメリカモデル追従を止め、新しい価値観を再設計

私たちは「小さな米国」を目指して、今後もかの国の後追いをし続けるのでしょうか?

 

GDPという指標はもともとアメリカによって考案されたわけですが、この指標で国威を測るからこそアメリカがつねに優位な立場にある(ように見える)という点を忘れてはなりません。

 

元はイギリスの植民地であったアメリカにおいて、なぜイギリスでとても人気のあるサッカーやクリケットやラグビーというスポーツがまったく受け入れられず、バスケットボールやアメリカンフットボールや野球といった、他国に類のないユニークなスポーツが流行しているのか。

 

これはアメリカと同様に、かつてはイギリスの植民地だったインドやオーストラリアやニュージーランドにおいて、いまだにラグビーやクリケットといったスポーツが国民の人気を集めていることを考えてみると不思議なことです。ここに開国以来、かの国に通底する「他国が得意な競技では決して戦わない」という強い選択的意図が読み取れます。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

アメリカの経済分析局はかつて「GDPは20世紀でもっとも偉大な発明の一つだ」と評しましたが、そう考えるのも無理はありません。なんといっても、この指標で測るからこそ「アメリカは世界一の覇権国」であり続けられるのです。そしていま、製造産業から情報産業へのシフトが大きく進むアメリカによって「非物質的な財=無形資産をGDPに算入しよう」という議論が主導されている。

 

この議論の裏側に横たわるホンネを「いままでは自分がよく見えるモノサシだったけど、このモノサシだといまひとつ成長率が鈍くなってきた上に、猛烈な勢いで追い上げてくる国も出てきたので自分たちが優位に見えるようなルール改変を導入したい」と解釈すれば、この提案に対して眉に唾したくなるのが当然の反応ではないでしょうか。

 

第2次世界大戦の敗戦後から半世紀以上のあいだ、私たちの国はひたすらに「アメリカを目指す」ということを行ってきたわけですが、本当に今後もそれをつづけるべきなのでしょうか。

 

2020年5月、警官による理不尽な暴力によって黒人男性のジョージ・フロイド氏が死亡したことがきっかけとなり、全米各地で大規模な暴動が発生しています。人種的差別と経済的格差という「2重の分断」によって引き裂かれ、いまだに国民皆保険の実現すらおぼつかないアメリカを太平洋の反対側から眺めて、心の底から「あのような社会が理想だ」と思う人は一人もいないでしょう。

 

第2次世界大戦の後、灰燼に帰した国土で「物質的貧困」という問題に悩まされていた私たちにとって、物質的繁栄を謳歌するアメリカが「憧れの国」に思えたことはわからないではありません。しかし先述した通り、私たちはすでにこの問題を解決してしまったのですから、そろそろアメリカモデルの追従をやめ、経済・物質に代わる新しい価値観、新しい社会ビジョンを再設計しなければならない段階に来ているのではないでしょうか。

 

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ライプニッツ 代表 独立研究者
著作家
パブリックスピーカー

1970年東京都生まれ。神奈川県葉山町に在住。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美学美術史専攻修士課程修了。

電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。

その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』『ニュータイプの時代』(ともにダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。

(的野 弘路=撮影)

著者紹介

連載日本人はコロナ後の世界をどう生きるべきか

ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

山口 周

プレジデント社

ビジネスはその歴史的使命をすでに終えているのではないか? 21世紀を生きる私たちの課せられた仕事は、過去のノスタルジーに引きずられて終了しつつある「経済成長」というゲームに不毛な延命・蘇生措置を施すことではない…

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