先進7カ国をはじめ、全世界的に見て成長率は停滞
さて、先進7カ国の経済成長率は中長期的な低下傾向にあり、これは「文明化の終焉」によってもたらされた必然的な状況です。
このような指摘については「先進国の、しかもここ50年だけのトレンドを示しているだけで、視野が局所的なのではないか?」という批判もあるかもしれません。たしかに、今後の経済成長はアジアとアフリカを中心とした非先進国によって牽引されると予測されていますから、先進国だけのトレンドを用いてこのような指摘をするのは早計だと思われるかもしれません。
ここではまずBRICs、すなわち21世紀のグローバル経済の牽引役となるであろうと期待されたブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の数値を確認してみましょう。この用語はもともと、2001年11月に当時、投資銀行ゴールドマン・サックスのエコノミストだったジム・オニールが投資家向けに提出したレポート「Building Better Global Economic BRICs」の中で初めて用い、その後世界中に広まったわけですが、最近ではすっかり耳にすることがなくなってしまいました。
結局のところどうだったかというと、ロシアの2000年代のGDP成長率は4.93%と、たしかに他の先進7カ国と比較しても高い数値ではありましたが、2010年代のGDP成長率は0.91と、フランスと同等、日本とほぼ同等のレベルにまで急落しています。またブラジルについても同様で、2000年代には3.71%だったGDP成長率は、2010年代には1.21%まで低下しており、他の先進国とほぼ同様の水準となっています。
BRICsをなす4カ国のうち、ブーム当時と同等の成長率を維持しているのはすでにインドしかありませんが、そのインドも、今回のコロナによるパンデミックによって経済成長に急ブレーキがかかっており、元の成長トレンドに回復できるかは不透明な状況にあります。
新しい千年紀の到来に沸いていた2000年代の初頭において、あれほどまでに「世界経済を牽引してくれる」と期待されたBRICsの勢いが20年ともたずに失速してしまったという事実は私たちに辛辣な示唆を与えます。それは、今後の経済成長が期待されているアフリカをはじめとしたエリアについても、キャッチアップによるボーナス期間はそれほど長くはつづかないだろう、ということです。