医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げ(東京女子医科大学など、現時点では数校値上がりしている大学がある)などもあり、近年、医学部人気が高まっているという。従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が続々参戦し、全国の82医学部入試の難易度が上昇している。では、どうすれば難関の医学部を突破できるのか。わが子の育て方、接し方から入試対策までを明らかにする。本連載は小林公夫著『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

「仮説思考力」は社会に出てからも求められる能力

「仮説思考力」を鍛える

 

この思考力の有無は、たとえば立体図形ならば、与えられた問題の図形からどれだけ幅広いイメージを見て取ることができるかにあります。図形をただの線画としか見ることができなければ、切断面を想像することができず、問題に対して、定型化されたことをあてはめて解くしかありません。

 

およそ中学2年生くらいまでは、図形の根本をわかっていなくても、その方法である程度はクリアすることができるので、数学的なセンスは無関係ですが、3年になり三平方の定理が出てくると、そうはいきません。そこで、ようやく空間図形をしっかりと認識できていないことに気づく子どもが多く、偏差値が60を超えていても立体を苦手とする子どももいます。

 

高校受験を控えて、その状態では厳しいですし、たとえ公式にあてはめる手法でその場を乗り切ったとしても、高校進学後に学力が伸びないことが多いのです。

 

空間図形のイメージを身につけるトレーニングで有効なのは、実際に豆腐を切ってみたり、積み木を組み立ててさまざまな方向から観察することです。キューブ型のブロックをいくつも使って立方体や直方体を組み立てると、目には見えないところにもキューブが存在することがわかります。手を動かして組み立て、頭を使って考える、そして今度は実物を使わないで考える、という過程で想像力と思考力を鍛えていくのです。

 

広い意味で「仮説思考力」を鍛えるには、学校の授業だけではなく、パズルのようなものも有効です。

 

たとえば、AからEの5人が5桁の数字を連想し、与えられた5桁の数字とそれぞれが連想した数字を比較し、○や△を表示するというパズルです。そして、「○は入れた場所も正しくて数字も合っている。△は入れた場所がまちがっていて数字は合っている」というルールで記載させ、AからEがどの数字を入れたかを考察していくような問題です。

 

予測にしたがって数字を割り振ると辻褄が合わなくなり、次々と別の方法を試していくという訓練になります。学校で評価される学力とは一見結びつかないようですが、こういった問題に取り組める子どもはいわゆる地頭の良い子どもで、勉強を続けていくうちに伸びていきます。

 

このような思考訓練に意識的に取り組ませ、算数の楽しさを感じさせること、また、子どもの思考の伸びしろを邪魔しないよう、自分で考えるように習慣づけていくことは大切です。考え続ける粘り強さ、問題に向かっていく姿勢は将来役に立ちます。

 

事実、前述したパズル形式で出題されたような問題が、国家公務員Ⅰ種試験や医学部入試の適性試験でも出題されていることを考えると、「仮説思考力」は社会に出てからも求められる必要な能力と言えるのではないでしょうか。

 

次ページ読書は思考力のトレーニングに有効である
わが子を医学部に入れる

わが子を医学部に入れる

小林 公夫

祥伝社

近年、医学部志願者が急増しています。その要因として、医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げなどがあげられます。これにより、従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が参戦。全国の82医学…

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