「仮説思考力」は社会に出てからも求められる能力
「仮説思考力」を鍛える
この思考力の有無は、たとえば立体図形ならば、与えられた問題の図形からどれだけ幅広いイメージを見て取ることができるかにあります。図形をただの線画としか見ることができなければ、切断面を想像することができず、問題に対して、定型化されたことをあてはめて解くしかありません。
およそ中学2年生くらいまでは、図形の根本をわかっていなくても、その方法である程度はクリアすることができるので、数学的なセンスは無関係ですが、3年になり三平方の定理が出てくると、そうはいきません。そこで、ようやく空間図形をしっかりと認識できていないことに気づく子どもが多く、偏差値が60を超えていても立体を苦手とする子どももいます。
高校受験を控えて、その状態では厳しいですし、たとえ公式にあてはめる手法でその場を乗り切ったとしても、高校進学後に学力が伸びないことが多いのです。
空間図形のイメージを身につけるトレーニングで有効なのは、実際に豆腐を切ってみたり、積み木を組み立ててさまざまな方向から観察することです。キューブ型のブロックをいくつも使って立方体や直方体を組み立てると、目には見えないところにもキューブが存在することがわかります。手を動かして組み立て、頭を使って考える、そして今度は実物を使わないで考える、という過程で想像力と思考力を鍛えていくのです。
広い意味で「仮説思考力」を鍛えるには、学校の授業だけではなく、パズルのようなものも有効です。
たとえば、AからEの5人が5桁の数字を連想し、与えられた5桁の数字とそれぞれが連想した数字を比較し、○や△を表示するというパズルです。そして、「○は入れた場所も正しくて数字も合っている。△は入れた場所がまちがっていて数字は合っている」というルールで記載させ、AからEがどの数字を入れたかを考察していくような問題です。
予測にしたがって数字を割り振ると辻褄が合わなくなり、次々と別の方法を試していくという訓練になります。学校で評価される学力とは一見結びつかないようですが、こういった問題に取り組める子どもはいわゆる地頭の良い子どもで、勉強を続けていくうちに伸びていきます。
このような思考訓練に意識的に取り組ませ、算数の楽しさを感じさせること、また、子どもの思考の伸びしろを邪魔しないよう、自分で考えるように習慣づけていくことは大切です。考え続ける粘り強さ、問題に向かっていく姿勢は将来役に立ちます。
事実、前述したパズル形式で出題されたような問題が、国家公務員Ⅰ種試験や医学部入試の適性試験でも出題されていることを考えると、「仮説思考力」は社会に出てからも求められる必要な能力と言えるのではないでしょうか。