女性医師の実像「産婦人科医Kさん」の場合
パート医師の問題
女性の医学部入学者が増加傾向にあり、それにつれて全医師数における女性医師が占める割合も年々増加しています。いっぽうで、結婚や出産などで早く辞めてしまう女性医師が多いなど、多くの問題もあります。女性の仕事として、また職場として、医師と病院はどういうものなのか、女性医師の占める割合が多い産婦人科医を見てみましょう。
現在、20代から30代前半までの産婦人科医の70%が女性です。男性医師は減少しており、実家が産婦人科クリニックで跡を継ぐ意思のある人か、よほど意欲がある人以外は産婦人科を選ばないようです。医学生が職場見学に来ても、現場に男性が少ないので選びづらいのかもしれません。
全体的に女性医師は増えていますが、さまざまな問題も起きています。ある病院では常勤医師の半分を女性が占めるようになったまでは良かったのですが、結婚や出産で次々と退職し、病院の存立が危ぶまれる事態にまで陥りました。
また、結婚や出産など数年のブランク後、パートとして職場復帰を果たす道を採る人もいます。たとえば、産婦人科では子宮がん検診や9時から17時までの外来をパートが担当し、急な入院患者がいた場合は常勤医師に任せるというパターンです。
パート医師の募集はたくさんあり、時給で1万5000円から2万円ほど支払う病院もあります。常勤の医師が深夜に呼び出されたり、さまざまな事象に対して責任を負わなければいけないことを考えると、週の1〜2日、複数の病院を掛け持ちで働くほうが、時間的な余裕もあり、金銭的にも恵まれているので希望者が増えているそうです。
いっぽう、常勤医師からはパート医師との間に労働格差、経済格差を感じているという声が聞かれます。常勤医師は外来診療の他に、病棟に多くの受け持ちの患者がおり、休日や夜間も緊急の呼び出しがかかることがあります。また診療科によっては手術も行ないますから、かなりの激務です。
このように、女性医師のパート化が進むと、常勤医師の数が減り、医療の質を担保できなくなるという大きな問題をはらんでいるのです。
医師は、どの科でも訴訟リスクがありますが、産婦人科は特にそのリスクが高いようです。患者は「無事に産まれてあたりまえ」と思っているため、多くの産婦人科医がトラブルを経験しています。医師に落ち度がなくても、容態が急変したり術後に合併症を起こすことがあるのですが、そのことを説明しても、「納得がいかない」と詰め寄られるのです。患者の家族が怒鳴り込んでくることも日常茶飯事です。
このような場合、ほとんどの病院で当事者は出て行かないという原則があり、管理職の医師が担当医師の対応と言い分を伝え、謝罪します。それでも収まらない場合は病院の医事科が対応し、だいたいは裁判所に行く前に示談となります。