近年は、遺言書に対する世間的関心の高まりや、司法書士、弁護士等による宣伝広告活動により、専門家が関与して、公正証書遺言が作成されるというケースが多くなっています。「遺言の有効性」について争われた裁判で、「公正証書遺言が無効とみなされた東京地裁の判決」をみていきます。

 

1 本件遺言書作成日の約10日前から,肺癌の骨転移に伴う高カルシウム血症,腸閉塞に伴う脱水等の症状や肺癌に伴う肺炎に起因する低酸素血症などの意識障害を引き起こしかねない病態が重なって徐々に意識レベルが低下していたこと

2 本件遺言書作成日の約1週間前には,閉眼して傾眠傾向の状態になり,呼びかけてもあまり反応しないような状態に陥っていたこと

3 本件遺言書作成日の前日にも傾眠傾向にあって,同様の呼吸を続けており,同日夜には見当識障害が認められたこと

4 本件遺言書の作成当日には,上肢と手指に抑制器具を装着して酸素供給を受けながら,公証人により遺言公正証書の案文を読み聞かされている最中に,首を大きく横に振って非常に苦しそうな態度をしてそのまま眠ってしまい,公証人が一旦は遺言公正証書の作成を断念するほどの状況になり,妻から何度も揺すられ声をかけられてようやく目をさました、という状態だったこと

 

ちなみに、遺言者は、遺言作成時は、肺癌に脳幹梗塞を併発して入院中であり、遺言の作成の約一月後に死亡しています。

 

なお、遺言作成の10日前に、遺言者の主治医により「判断能力は十分にあったと考えられる旨の診断書」が作成されていますが、それでも、遺言書は無効であるとされています。

 

主治医は問題ないと判断したが…(画像はイメージです/PIXTA)
主治医は問題ないと判断したが…(画像はイメージです/PIXTA)

 

 

この裁判例においては、弁護士や公証人の関与、というのはほとんど考慮されていません。あくまでも、遺言者の遺言作成時の「心身の状態」について、遺言作成の直前から遺言作成当日の状況まで、かなり詳細に事実認定をした上で、遺言の有効性を判断しています。

 

 

※本記事は、北村亮典氏監修のHP「相続・離婚法律相談」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

 

 

北村 亮典

こすぎ法律事務所弁護士

 

 

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