「黒川さん、39度のお熱がありま……」。ショートステイのスタッフから突然の電話があった。まさか、コロナに感染した? 心配しながら車ですぐに迎えにいくとじーじが車いすでやってきた。そしてPCR検査に病院を訪れたところ……。じーじを在宅介護で面倒をみている黒川家を突然襲ったじーじのコロナ疑惑、黒川家はどうなったのか。連載「見つめてひらめく介護のかたち『楽しむ介護』実践日誌」の著者の黒川玲子さんに認知症の父を在宅で介護する取り組みを現場報告する連載特別編をお届けします。

認知症父の悲鳴「俺はコロナなのか、俺はもうだめだ」

そこで昨日、主治医が言っていた「唾液がでなかったら、梅干しを見せるといいですよ」と言われたのを思い出し、梅干しを目の前に差し出すと、

 

「なんだこれは、熱さましか?」と言ったとたんにパクリと食べられてしまった。

 

が、口の中は唾液でいっぱいのはずである。そこで、今がチャンスとばかりに、

「ここに、唾液を入れて」というと、なんと、梅干しの種を出されて作戦は大失敗。

 

何度も、ツバを出せだの唾液を出せと言われるものだから、

 

「ツバだの唾液だのって、俺に何をする気かあ~~」とご立腹。

 

そういえばPCR検査だって言っていなかったことを思いだした。

 

「唾液でできるPCR検査するからさあ」と言うと、

 

「PCRだと、俺はコロナなのか……、俺はもうだめだ……、世話になったな」などとあらぬことを口走る始末。念のための検査だと伝えても、「俺はもうだめだ」を繰り返すじーじ。

 

もう、何を言っても聞こえていないようである。さすがに私もいい加減面倒臭くなってきた。

 

そ! その時、「げっほっ。げっほっ」。

 

じーじは咳き込むと痰を出す確率が高いのだ。今がチャンスとばかりに素早くティッシュをわしずかみにして、じーじの口元に。

 

見事採取成功。唾液じゃないけど、同じようなもんだろう。

 

こうして苦労を重ねてやっと採取した、限りなく痰に近い唾液を入れた、どう見ても検便袋にしか見えない袋をクリニックに提出したのであった。

 

夕方、クリニックから電話がかかってきた、

 

「良かったですね。検査の結果は陰性でした。あとは、熱が下がるまで、水分をたくさん飲ませてくださいね。」

 

私は、たくさんお礼を言って電話を切ろうとしたその時!

 

「偽陰性の疑いがありますので、熱が下がってから3日間はデイサービスの利用を控えてください」と、悪魔のような一言。

 

どう楽観的に考えても熱が下がるまでに約4日。その後3日間、つまり1週間近くデイサービスの利用ができないことになる。ってことは、私は仕事ができないじゃないか!!

 

サラリーマンだって、突然1週間も会社を休むのは大変だろうが、有給を使える人なら収入は減らないだろう。しかし、わが家の場合は、私が仕事を休んだらあっという間に収入が減ってしまうのである。

 

どうしても行かなければならない仕事の日に急遽ヘルパーさんを頼みこみ。リモートで対応できるところはお願いし、なんとか1週間を乗り切ったが、改めてデイサービスのありがたさが身に染みた1週間だったのである。

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

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