ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

認知症の徘徊は年間1万人以上の現実とは

屋外徘徊に備えて先取り準備

 

ウロウロとさまようことを徘徊と言います。本人には目的がある場合もありますが、方向がわからなくなると、とにかく歩いて進むという感覚です。徘徊した人の中には車や電車の事故で亡くなるケースもあり、家族としてもこの終わりかたでは悔いが残りますし自分を責めてしまいます。そして何より親本人も気の毒です。

 

対策としては、洋服に名前と電話番号を書いておく、GPS付きの靴を購入するなど身につけるものに工夫をするか、出入り口に、外に出ないでくださいと書いておくことも有効です。出ていくところを目撃しているのなら、後からついていき、適当なところで偶然を装って連れ帰るなども効果的です。要は、外に出たくて仕方がないので、犬の散歩に誘うなど先手を打って外出させておくと、少し頻度が減るように感じました。

 

とはいえいつも目を光らせるのには限界があるので、わが家は早々に鍵穴にサムターンガードを付け、道具がないと出られないようにしました。徘徊防止鍵も今は多く売っています。風鈴や鈴など音が出るものをドアに付けておくと気づきにもなり効果的です。認知症の徘徊は年間1万人以上といわれます。家に戻れず施設で保護されている場合もありますが、ごく一部です。

 

皆が、「誰か優しい人に保護されて税金で施設に入れてもらえたら」などと考えたら日本は破産してしまいます。不明なままの人はどこで何をされているのでしょうか? 繰り返しますが、人身事故も多いのです。加害者となる人も出てきてしまうのです。家族や社会のためにも未然に防ぐようにしましょう。

 

自宅内でも落ち着かないでウロウロする

 

まだ自立歩行ができていたのに、外に自由に出られなくしたので、家の中を歩き回ることが増えました。毎日午前3時に靴をはいてガチャガチャと外に出ようとします。夜は廊下も見えにくいのでセンサー付きのライトを設置し、私もその頃から母の部屋横のリビングに布団を敷いて寝ることにしました。

 

たまに夜中に入ってくることもあり、廊下もすり足で歩くのですが、私の方が徘徊に敏感になっていたようで、そのたびに何故か目が覚めていました。仕事を続けていたので昼寝もできず、明らかに寝不足です。以前は7時間睡眠でしたが、この頃は5時間でした。

 

今、母は車いすになり徘徊はしないので皮肉にも夜は眠れるようになりました。ですが、自分が起きたタイミングで様子を見にいくので、今でも私の寝る部屋はリビングです。部屋がないから在宅介護はできないと思うのは早いかもしれません。どこでも生活はできます。介護が始まったら家族が最優先。リビングにベッドを置くのでも良いと思います。とにかく雨風をしのげれば、他人からどう見られるかとかどうでも良いのです。

 

帰宅願望はどこの家にいても起こる

 

「どこに行くの?」「家に帰ろうと思って」。この会話は親が認知症の場合、割とよく聞かれます。帰る家はどこなのでしょうか? 母は私の家に呼び寄せたので、実家なのかもしれません。ですが、実家にいても、他に帰る家がある人もいます。生家だったり別宅だったりするのでしょうか。とにかく「家に帰ろうと思って」を口実に外に出たいので、玄関まわりのあらゆるものを触ります。

 

一度、母がチェーンをかけてしまったことがあります。これを外してもらうのに1時間はかかりました。それ以降、チェーンは触らせないようにテープで留めました。部屋の窓も注意が必要です。自分で開けることができた頃、窓越しに話をして宗教に勧誘される直前だったという事件や庭に出て柵をまたいでいたこともありました。

 

とにかく、行動の予測がつかないのです。それ以降、部屋の窓の鍵も親が自分で開けられないよう、上下のどちらかに簡単な鍵を追加しました。何かあるごとに対応をしましたが、それだけでもかなり安心して暮らせるようになりました。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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