「介護をとるか」「仕事をとるか」子の究極二択…親の本音は?

ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

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わが子が仕事を辞めるのを喜ぶ親はいない

介護離職防止のコツは「辞めないと決めること」

 

仕事を辞めて自身が介護に専念するか否かは、気持ち、時間、お金という複雑な家庭環境が絡み合います。私は介護離職NGとは思っていませんが、辞めたくないのに離職しなくてはと考えているならば、「辞めないと決めてください」とメッセージを送ります。

 

今は、一昔前のように、親の介護を家族で負担する時代ではありません。これは、10年以上介護を続けてきて本当にそう思えます。簡単です! 辞めないためにどうすれは良いのかを考えるのです。1番目に家族の生活(これ最優先)、2番目が出せるお金、3番目が本人の希望(一番が本人の希望ではない、家族が倒れたら介護は終わり)。親も大事ですが、自分や今の家族も大事です。みんなで幸せになるのが一番なのです。

 

親も大事ですが、自分や今の家族も大事です。みんなで幸せになるのが一番だという。(※写真はイメージです/PIXTA)
親も大事ですが、自分や今の家族も大事です。みんなで幸せになるのが一番だという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

仕事を辞めて介護に専念しなければならない理由はなんですか?

 

他人思考(親が原因)と自分思考(自分が決定)があります。前者は親に育ててもらった恩があるから、子には面倒を見る責任があるからなど、親のために辞めるのだという考えです。後者は、自分が仕事よりも親との時間を大切にしたいなど、自分の意思で決定したという考えです。前者は世間体が良いかもしれませんが、もしかしたら本心のどこかで自分が仕事を辞めたいという気持ちが少なからずありませんか?

 

自分が仕事を辞めたいのに介護を理由にするなど親のせいにしてはいけません。それに自分のために、わが子が仕事を辞めるのを喜ぶ親もいません。同じ離職の道を選んだとしても、自分思考は自分の気持ちに向き合うので納得する分、たとえ困難にぶつかっても自分で決めたことと前向きになれるのです。

 

介護休業申請は看取りのとき

 

勤続1年以上の労働者は、通算93日(3回まで分割可)まで介護休業を申請できます。法律があっても中小企業はひとりの欠員が仕事に及ぼす影響は大きく、また大企業であっても分割取得の場合、都度調整が必要で迷惑なことになるのも現実です。

 

介護休業取得者への不利益な取り扱いは禁止とはいえ、リストラや降格が全くないとは言えません。それならば年をとったらリスクを負わないのも選択肢です。介護休業の93日というのは、脳卒中で倒れたケースをモデルに、入院して退院、その後安定するまでの期間を想定しています。

 

適切な介護サービス事業所を探し契約するなど介護と仕事を両立するための準備期間の位置づけだからです。

 

私は、日々のお世話や手続きも大切ですが、それ以上にお別れのその瞬間を大切に考えています。早く言えば看取りです。

 

介護休業は開始日の2週間前までに申し出ます。大方の場合、死期が近づくと食事がとれなくなる、個別部屋に移動になるなど兆候が出てきます。介護休業の取得はサラリーマンの特権です。看取りを自分でと思われるのなら、このときだけは申請検討の価値は大いにあると思います。

 

職場へのカミングアウトは良い関係の第一歩

 

私が在宅介護をしていることを職場の仲間にはいち早く伝えました。母が認知症であることも最初から隠しませんでした。それは仕事を調整してもらうためではありません。どちらかというとお付き合いの方です。在宅介護をしていると平日夜間は、親睦会などの飲み会にはほとんど参加ができません。家族に協力をお願いすれば良いのですが、私の場合、自分の親のことなので何となく後ろめたくなるのです。

 

それなら年1回でも忘年会や新年会など大きな行事に参加し、ときには幹事に立候補するなども手です。このときは皆への感謝も込めて精いっぱい、楽しんでもらえる工夫をしてみます。「付き合いの悪いやつだ」などと言われても、気にしないようにしましょう。時間がとれないのだから、その中でできる範囲で良いのだと思います。

 

 

「在宅介護エキスパート協会」代表

1964 年、静岡市生まれ、川崎市育ち。NEC 関連会社(現職)でフルタイム勤務の中、10 年以上に渡り遠距離・在宅介護を担う。両親の介護をきっかけに社会福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなど福祉に直接的・間接的に関係する資格を取得。その経験や知識を多くの方に役立てていただけるよう「在宅介護エキスパート協会」を設立、代表を務める。
2人の子どもに恵まれるも、両親が同時期に脳血管障害、認知症、骨折、肺炎で入退院を繰り返す。長年にわたり仕事、子育て、介護(遠距離介護4年・在宅介護8年)の「トリプルワーク」を経験。仕事をしながらの育児、介護にストレスが極限にまで達し、介護疲れを起こす。書籍や情報サイトなどを頼るも、「介護の常識」は、仕事や育児との両立をしている人にとっては、全てこなすことなど到底できない理想論であることを痛感する。その後、「自分でもできる介護」を自力で確立することを決意。アイデア発想講師としての知識を生かし、それまでの「完璧な介護」から「自滅せず親も家族も幸せになる介護」へと発想の視点を変え、現代人のための介護思考法を独自に研究する。

著者紹介

連載親の入院、介護ですぐやること、考えること、お金のこと

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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