非医師家庭から医学部合格…高3まで数学と英語のみの独自勉強

医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げ(東京女子医科大学など、現時点では数校値上がりしている大学がある)などもあり、近年、医学部人気が高まっているという。従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が続々参戦し、全国の82医学部入試の難易度が上昇している。では、どうすれば難関の医学部を突破できるのか。わが子の育て方、接し方から入試対策までを明らかにする。本連載は小林公夫著『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

親としては早く自立して一人前になってほしい

Iさんはその年、名古屋大医学部を受けるも、あと数点というところで不合格。浪人時代はK塾に通ったり、家庭教師をつけたりしましたが、効果を感じず、ほとんどを独学で勉強しました。

 

高校時代に行なっていた通信教育は、わからない部分をFAXで送り解法を得るという部分が気に入っており、浪人中も続けていたそうです。ちなみに、この通信教育は年間30万円ほどで受けることができます。寮に入って予備校に通うと年間300万円ほどかかりますから、お金をかけずに受験勉強する方法のひとつではあります。

 

Iさんは1浪して再び名古屋大医学部を受験します。東大理科三類は、物理の土台がないことが不安につながり、回避を決めました。しかし、結果はまたもや不合格。幸い、別の国立大医学部の後期日程で合格を果たしました。

 

Iさんが選択した勉強法は非定型な勉強法だと思いますが、うまくやりきる人もいるかもしれません。もうすこし早く、自分の物理の学力を把握し、必要なレベルまで到達する時間がわかれば、結果は変わってきたのではないでしょうか。ただし、その時間も惜しんで英語、数学につぎ込むのがこの勉強法なので、両立はできませんが……。

 

特筆すべきは、この勉強法をIさん自身が選び、高校3年間、それを信じてやりきったことです。結果は思うようにいかなかったものの、医学部に合格するだけの学力はついたわけですし、一概に失敗とは言えないでしょう。同級生に冷たい目で見られても、くじけずに続ける精神力の強さを持った高校生がどれだけいるでしょうか。本人が選んだ方法で道を開いたことは意義深いと思います。

 

また、英語と数学が得意であることは医学生にとって強みです。英語の専門書を読む機会もありますし、国際学会では英語のスピーチが求められ、英語は避けて通れませんから。さらに、Iさんが入学した大学医学部は留年する人も多く、その多くは数学でひっかかることが原因だそうです。その面でも、ひとまず安心です。

 

親の心配

 

現在、Iさんは実家を離れてアパートで一人暮らしをしながら大学生活を送っていますが、自炊などに苦労しており、父親に「自宅から通学できる医学部を受け直したい」とも言っているそうです。

 

父親は、Iさんが医学部に入ったことは喜ばしく思いながらも、自立への道のりが長いこと、精神的、身体的に堅固さが要求される仕事であることが気にかかっているようです。もともとIさんには医師になりたいという強い意志があるわけでなく、人を救いたい、世の人のためになりたい、という思いも感じられないことから、モチベーションがどこまで続くのか不安だそうです。

 

「子どもが医学部に入ったからすべてが安心かというと、そうではありません。実際にやってみて合わないこともあるでしょうし、別の道を志すこともあるでしょう。親としては、早く自立して一人前の大人になってほしいのです。高校を出てすぐに就職して、結婚して、孫の顔を見る、というのもいいですよ。医学部だけがすべてじゃない、と思っています」(Iさんの父親)。

 

3人の子どもたちを育てるなかには苦労があり、親として何よりも子どもが健やかに成長してくれることが一番の願いであることを語ってくれました。

 

最近、Iさんから父親にかかってきた電話では、医学部の附属病院で家庭教師のボランティアを始めたとのことでした。附属病院には重度の障害や病気で入院を余儀なくされ、学校に行けない子どもたちが一定数入院しています。その子どもたちに勉強を教える息子の様子を目に浮かべながら、父親は「あいつがなあ」と驚きながらも、嬉しそうでした。
 

 

小林 公夫
作家 医事法学者

 

 

作家 医事法学者

東京都出身。一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了、一橋大学博士(法学)、専門は刑法、医事法、生命倫理、法哲学。獨協医科大学医学部医学科医事法制担当教員。主著に「治療行為の正当化原理」(日本評論社)、大塚仁博士,古田佑紀元最高裁判事らとの共著「大コンメンタール刑法第3版第2巻」(青林書院)などがある。RADIOBERRYで医学の話題などを発信しており、ハカセ公夫はDJ名。医学部専門予備校クエスト、医学部受験予備校インテグラ、家庭教師のトライで講師を務めている。また、医学部受験情報を発信するFM栃木RADIOBERRY「ハカセ公夫の受験ホットほっとライン」で、DJも務める。主著にシリーズ累計25万部を超える『「勉強しろ」と言わずに子どもを勉強させる法』「オトバンク FeBe版 勉強しろと言わずに子供を勉強させる法」(以上、PHP研究所)など。長く医学部受験を指導しており、『医学部の面接』『医学部の実戦小論文』(以上、教学社)は医学部受験生のバイブルである。なお、東大受験漫画『ドラゴン桜』9巻にも登場している。活動状況は、「小林公夫オフィシャルサイト」「小林公夫Twitter」「小林公夫の愛でたいモノたち」をご覧ください。著者撮影/佐々木健

著者紹介

連載東大よりも医学部!わが子を医学部に入れる方法

わが子を医学部に入れる

わが子を医学部に入れる

小林 公夫

祥伝社

近年、医学部志願者が急増しています。その要因として、医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げなどがあげられます。これにより、従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が参戦。全国の82医学…

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