医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げ(東京女子医科大学など、現時点では数校値上がりしている大学がある)などもあり、近年、医学部人気が高まっているという。従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が続々参戦し、全国の82医学部入試の難易度が上昇している。では、どうすれば難関の医学部を突破できるのか。わが子の育て方、接し方から入試対策までを明らかにする。本連載は小林公夫著『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

高3まで数学と英語の独自の勉強法を貫くが…

テレビはリビングに置かない

 

勉強をするのは、家族が集うリビング。個室が与えられたのは中学生になってからだったので、それまでは子ども3人が勉強するのを自然と親が見ている環境でした。ここでのポイントは、Iさんの家のリビングにはテレビがなかったこと。テレビは寝室にしかなかったので、好きなアニメなど見たい番組はそこに行って見る、というメリハリのついた生活ができる環境になっていました。それは、新居に移って個室を持つようになっても変わらず、ダラダラとテレビを見る習慣はありませんでした。

 

勉強以外では、Iさんは恐竜が大好きだったため、よく家族で博物館へ足を運んだそうです。また、体を動かすことも大事と考えた父親は、毎週末と夏休みは極力、子どもたちと外で遊ぶようにしました。近くの小学校の校庭が一般開放されていたので、家族5人で出かけて鉄棒をしたり、町民プールで泳いだりもしたそうです。

 

小学校5、6年生までそのように過ごしていたというので、大変に子煩悩な父親であり、家族仲が良好なのでしょう。勉強は、遊びのあとに行なっていたそうです。また、家事などお手伝いなどをさせることは特になかったようです。

 

中学時代は陸上部に所属、短距離の選手として遅い時間まで部活をがんばっていたというIさん。それでも成績は常にトップで、部活と勉強をうまく両立させていました。小学生の頃は勉強を見ていた父親は、中学生になるとほとんどタッチしなくなりました。進学塾に通っていたので、勉強は塾に任せていたそうです。

 

その塾の模試で1番になり、それが東大理科三類を意識するきっかけとなりました。医師になりたいという思いはなく、ただ偏差値がトップということで最難関を目指し始めたのです。

 

地元中学を卒業後、地元の進学校に合格。この高校は学校祭や運動会など行事がさかんなことで有名で、その活発な雰囲気が好きで志望する人が多いのですが、Iさんは、その雰囲気は好きではなかったそうです。

 

父親によれば、Iさんは高校に入ってから口数が少なくなり、部屋にこもって勉強をするようになりました。学校の雰囲気になじめなかったせいか、あまり交友関係には恵まれなかったのかもしれません。

 

高校3年まで、数学と英語だけを勉強

 

Iさんは東大理科三類を目指すにあたり、兄が参考にしていた、受験アドバイザー&評論家が提唱する勉強法を取り入れることにしました。高校3年生の1学期まで数学と英語だけを勉強する、物理や化学など他の科目は3年生の2学期からで間に合う、という主張を元に高校入学後すぐにR受験指導ゼミナールの通信教育を受け始めます。

 

そして、高校1年から3年の1学期の終わりまで、勉強は数学と英語だけ。他教科の授業中も、数学や英語のテキストを開いて勉強をしていたそうです。その姿は、同級生たちの目には奇異に映ったようで、馬鹿にされたこともあったようです。

 

実際、数学と英語はトップクラスの成績でしたが、他の教科は定期試験では赤点で、成績表に2が並んでいる状態でした。親はすでに勉強に口出しをしませんでしたし、高校は自由な校風だったので、個人の勉強法を指示したり、矯正したりされることもなく、独自の勉強法を貫くことが可能な環境ではありました。

 

しかし、いざ3年生の2学期になると、その時点の物理の学力を東大理科三類合格まで引き上げることは難しいことがわかり(「そのレベルに達するには2年かかる」と言われたそうです)、進路指導の段階で第一志望をあきらめました。それでも、2、3学期の短期間で名古屋大医学部のレベルまで上がり、合格ラインまで乗せることができたのは驚異的です。

 

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わが子を医学部に入れる

わが子を医学部に入れる

小林 公夫

祥伝社

近年、医学部志願者が急増しています。その要因として、医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げなどがあげられます。これにより、従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が参戦。全国の82医学…

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