「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

事業主と事業専従者の慰安旅行は経費にならない?

では、事業主と事業専従者だけで旅行をしたときはどうなるのでしょうか。この場合も、残念ながら必要経費に算入することはできません。「それは家族旅行でしょう」ということになってしまうからです。

 

この件については、裁判所の判決も出ています。名古屋高裁の平成7年3月30日の判決によると、事業主が、事業専従者の妻と、子ども2人を連れて夏休み期間中に観光地を訪れたものを、慰安旅行であるとして必要経費と認めるように訴えていますが、裁判所は、「業務の遂行上必要であるとはいえない」と判断しています。

 

私も事業主ですから、家族旅行が仕事のモチベーションを高め、仕事に役立つ面があることは理解していますが、税務上の必要経費にはならないということなので、ここはあきらめるしかありません。

 

使用人を連れて必要経費になりそうなケースであっても、「社会通念上、一般的に行われている限度」を意識しておく必要があります。高額な食事代や旅行代を気ままに支払っていると、やはり税務的に問題になるかもしれません。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年2月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

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