危機的状況では縦割りにこだわらない「柔軟な文化」
リーズンは、高信頼性組識(High Reliability Organizations:HROs)はどのような特徴があるのかを調べました。高信頼性組識とは、米海軍のような完璧で失敗なしで作業を完遂することが求められていて、さらに非常に高度で、かつ複雑な技術指向の組織のことです。
その結果、高信頼性組識では、日常においては縦割りの階層・階級による指揮命令系統で仕事をしていますが、戦闘行為や危険に直面したときには、状況に応じて柔軟に対応するという「柔軟な文化(flexible culture)」があることに気が付きました。困難な状況では、作業員および第一線の監督者の技術、経験、能力に大きく依存するからです。
この組織運営には、組織全体が構成員の技術、経験、能力を尊重しなければならず、これを醸成するためには訓練が必要で、多大な投資を必要とします。
問題が起こる前に察知し改革する「学習し続ける文化」
組織は、常に変化している外部環境、あるいは組織の内部環境の中に内在するリスク要因を、たとえば安全情報報告システムを活用して、なにか問題が起こりそうなことをキャッチして、必要性が示唆されたとき、大きな改革を実施する意思を持たなければなりません。情報をもとに「学習し続ける文化(Learning Culture)」が必要なのです。
「組織の学習障害(learning disability)は致命的である。そのために企業は、人間の人生の半分の長さも存続できない。大部分は40年ももたないうちにつぶれる」(Peter Senge, 1990)
と指摘されながら、自らの安全情報システムによって改革を行う必要性が示唆されているにもかかわらず、上層部の経営者はなかなか納得しないという現状があります。なにか大きな問題が発覚すると、後から常にそのような兆候があったと指摘されています。
そのときはもう遅いのです。いくつかの大学病院で発生した問題もまったく同じです。