正しい情報が経営層まで共有され、情報に基づく判断のできる組織は「安全文化」がつくられていると言えます。情報に基づく文化を構成する4つの文化である、①報告し続ける文化、②正義の文化、③柔軟な文化、④学習し続ける文化について詳細に見ていきましょう。※本記事は、河野龍太郎氏の著書「医療現場のヒューマンエラー対策ブック」(日本能率協会マネジメントセンター)より抜粋・再編集したものです

自分の経験した「ヒヤリハット事象」を報告する仕組み

航空界では航空安全情報自発報告制度をつくり、潜在的リスクの低減への努力を重ねてきました。航空業界ではとくに米国を中心としてASRS(Aviation Safety Reporting System)がインシデントを収集することに成功しています。

 

日本の医療界では、公益財団法人日本医療機能評価機構が、平成16年から各医療機関からの医療事故情報及びヒヤリハット事例の収集などを行っており、情報やその集計・分析の結果を中立的第三者機関として取りまとめています。

 

これらを医療従事者、国民、行政機関等広く社会に対して、定期的な報告書や年報、そしてファックスなどの医療安全情報として公表しています。インシデント報告システムは、あらゆる分野のリスク管理の基本として広く取り入れられています。

 

ところで、インシデント報告システムは自分の経験したヒヤリハット事象を報告する仕組みです。逆に言えば、ヒヤリとかハットしなければ報告する必要はないということです。

 

確かにそうなのですが、皆さんが日常業務の中で、これは危ないのではないか、ここは間違いやすいのではないか、と気付くことがあるでしょう。この情報も積極的に収集して、対策をとるという考えも重要です。

 

こうした情報を、気になる事象(間違いそうで気になるなぁ)、あるいはカモシレ事象(間違うかもしれない)、気がかり事象(ちょっと気がかりだな)といいます。これも積極的に集めましょう。

 

さらに、ここはこうやった方がいいのでは、という改善情報も積極的に集めましょう。効率よく仕事を進めるための情報も大歓迎です。仕事が早く終わると時間的余裕ができますから、次の仕事に余裕がでます。

 

事故調査制度と安全報告制度の基本的考え方は、システムに内在する問題を正しく理解し、理にかなった対策をとるということです。

 

医療界には、これまで事故調査制度がありませんでした。このため、「二度と事故を繰り返さない」という方策が不十分でした。しかし、平成27年に医療事故調査制度がスタートしました。これはようやく医療界にシステマティックな事故防止のための制度がスタートしたものであり、今後の成果が期待されます。

 

 

河野 龍太郎

株式会社安全推進研究所 代表取締役所長

 

 

医療現場のヒューマンエラー対策ブック

医療現場のヒューマンエラー対策ブック

河野 龍太郎

日本能率協会マネジメントセンター

医療現場のヒューマンエラーはゼロにはできないまでも、管理して減らすことができます。人間の行動モデルをもとに、 B=f(P、E) という式を知り、それによって人間の行動メカニズムを理解することがその第一歩です。 …

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