ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

親は扶養する?世帯分離する?

世帯分離とは親子の縁を切ることか?

 

母との同居が始まるとき、実家から住民票を移したのですが迷わず世帯分離にしました。これから同じ家で暮らしますが、私と夫、そして子どもたちの世帯と母の単独世帯に分けたのです。同じ住所の同じ家に世帯主がふたりいるということです。私は結婚して名前が変わっているので表札には自分の新姓と旧姓の苗字がふたつ並ぶことになりました。世帯分離すると、住民票など証明書類が分かれることになります。

 

世帯分離するメリット

 

健康保険料、介護保険料、介護保険サービス自己負担額は世帯所得で決まる場合が多々あります。なぜなら、国の制度は世帯全体で稼ぎがある場合は優遇しなくても良いでしょう、という考えだからです。収入がある現役世代とひとり親の年金世代が同居する場合は世帯分離の検討がお薦めです。

 

収入がある現役世代とひとり親の年金世代が同居する場合は世帯分離の検討すべきという。(※写真はイメージです/PIXTA)
収入がある現役世代とひとり親の年金世代が同居する場合は世帯分離の検討すべきという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

親が介護保険サービスを受けている75歳以上の後期高齢者である場合は、一般的には世帯分離をすることで親が住民税非課税世帯となり、医療や介護にかかる自己負担金額を大きく削減できる場合があります。高額介護サービス費の受給、後期高齢者医療保険料、介護保険料の負担減、インフルエンザなど予防接種の無料制度、入院・入居の際の食費居住費の負担減(預貯金額によっては対象外となる)などメリットが多々あります。個人によっては年間40万〜50万の違いが出てきます。

 

世帯分離するデメリット

 

立場によってはデメリットもあります。親が74歳以下の場合、国民健康保険料が増えてしまう可能性があります。そして、介護保険サービスを利用している親がふたりいる場合、高額療養費の世帯合算ができなくなります。職場によっては家族手当がつかなくなることもあるかもしれません。また、住民票も別々に発行されることになります。いつから世帯分離をするのが良いのか、判断が必要になります。

 

世帯分離の手続きをする

 

管轄の役所に出向いて世帯分離の手続きをするだけなのですが、介護保険の負担割合が2018年8月から3割負担世帯が出てきたことも一因で、世帯分離をして介護保険料の節約をしようと考える人が増えています。これから世帯分離を申請する場合、「一緒に住んでいるけれども家計は別だから申請に来ました」というのは立派な理由です。

 

くれぐれも「介護保険料の節約のために申請に来ました」などとは話さないでください。余計なことを言うと勘ぐられて根掘り葉掘り質問され、認められないケースもあります。世帯分離は介護保険の負担を軽くするための制度ではないのです。年度の途中で世帯分離をしても即日でメリットを受けられる場合ばかりではありません、翌年度からというものもありますので、いつから適用されるのか確認が必要となります。

 

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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