いま、弁護士や税理士などの士業は過渡期を迎えようとしています。「AIに仕事が奪われる」との声も……。しかし、士業のすべてなくなるわけではなく、人間にしかできない仕事がまだまだあります。AIやITなどの技術革新が続くなか、士業の仕事に付加価値をつける方法を税理士、公認会計士、心理カウンセラーとして活躍する著者が明らかにします。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

専門家とのネットワークは自身の売上向上に直結

③複数の情報入手経路を確保する

 

課題が生じている原因を分析する際に、経営者に現場の状況や課題が生じている原因について質問しますが、その回答は必ずしも正しいとは限りません。経営者は自分にとって都合のよい解釈で物事を捉えようとしたり、強い思い込みのもとに現場の状況を捉えていたりすると、現場で起きている事実と違うことを話されることがあります。同じ質問を現場の従業員にすると、まるで違う答えが返ってくることも珍しくありません。

 

そのため、課題解決に向けて事実を把握するうえでは、必要に応じて現場の従業員にも話を聴くことが重要であると覚えておいてください。現場の従業員も社長には言えなくても、外部の第三者になら言えることも多々あります。その意見をまとめて経営者にフィードバックすれば、「現場のことをわかっているつもりだったけど、全然わかっていなかったんだな」と、経営者にとって目から鱗の気づきをもたらすことがあります。

 

④解決事例を伝える

 

多くの経営者は自社しか経営したことがありません。そのために、「他の会社はこういった課題が生じた時に、どうやって解決しているのか?」ということに強い関心を持っています。

 

この点、士業は多くの会社の経営に何らかの形で関与する機会が多く、経営参謀として関わればさまざまな経営課題の解決事例を蓄積できます。解決方法をズバリ提示できなくとも、他社で同様の課題を抱えている事例を話すだけでも、経営者は関心を示します。

 

そのため、コンサルティングをするにあたり、事例は大きな価値を持っていることをぜひ知っておいてください。解決法を提案する場合においても、実際の解決事例と合わせて提案できるかどうかで、その説得力は全く変わってきます。もちろん事例を話す時は守秘義務を重々守る必要がありますので、くれぐれも留意してください。

 

⑤専門外の分野は他の専門家と連携する

 

専門外で自分が直接扱うのは難しい分野の課題については、人間的にも能力的にも信頼できる最適な専門家や業者を紹介することで、大きな付加価値を発揮することができます。最適な専門家や業者の紹介というのは、たとえば、クライアントが不動産に関する法的な課題を抱えていれば、ただ弁護士を紹介するのではなく、不動産案件を多く扱っている弁護士を紹介します。同じ専門家や業者でも得意分野は違ったりします。その点も踏まえたうえで、最適な人を紹介するようにします。

 

ただ、このような専門家や業者を探すことは簡単ではありません。インターネットで検索すれば数多くの専門家や業者がヒットしますが、ホームページの掲載情報だけでは人間性や実力はわかりません。人間的にも能力的にも信頼できるかどうかは、実際に会って人となりを見て、業務内容や料金体系を理解し、仕事ぶりを見てはじめてわかることです。

 

ウェブ上に存在する情報は無料で手に入るため価値を持たなくなるとお伝えしましたが、その人が信頼できるかどうかという情報はウェブ上には存在しない情報であるため、大きな価値を持ちます。自分の目で確かめたうえで優れた専門家を紹介して課題を解決できると、クライアントからの信用もさらに高まり、提案の幅も広げられます。

 

こういった専門家と一緒に仕事をする中で、自分もその分野に詳しくなることができ、ある程度の助言ができるようにもなります。また、紹介した専門家や業者からは感謝され、逆に仕事の紹介を受けることもあります。そのため、信頼できる専門家や業者とのネットワーク作りは間接的に自身の売上向上にもつながっていきます。
 

 

藤田耕司
一般社団法人日本経営心理士協会代表理事
FSGマネジメント株式会社代表取締役
FSG税理士事務所代表
公認会計士、税理士、心理カウンセラー

 

 

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経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

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