新型コロナウイルス感染の収束が見えないなか、先進国を中心に株式市場は活況を満ちています。実体経済との乖離も指摘され、警報を鳴らす専門家も多いなか、注目されているのがフィリピン株式です。その理由を、現地で日々フィリピン経済を調査している一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクター、家村均氏が解説します。

フィリピンの経済成長を支える人口ボーナス

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まずは、フィリピンの基本情報をジェトロのサイトから見てみましょう。特徴的なことは、人口が多い(1億人越え)、英語圏、GDP成長率が高い、一人当たりGDPが3000ドル越え(3,294USD)そして、ジェトロのデータには記載されていませんが、人口が多いだけではなく、経済成長の大きなドライバーである強い人口ボーナスです。

 

これらについて順番に書いていきます。

 

まず人口ですが、現在ほぼ日本と同じ規模の人口になっていますが、これからの変化がまったく違います。ご存じのように日本は世界でも最速で超高齢化が進行中であり、これから人口は減少傾向に入っていくのに対して、フィリピンはこれからも1億5000万人に向けて人口が増加していきます。人口規模イコール市場規模になりますので、これはこれからの経済成長の大きなドライバーになります。

 

そして、経済成長には、人口の規模だけではなく人口構成も極めて重要です。労働人口が大きければ大きいほど経済成長を加速するわけです。人口ボーナス期の定義については、いくつかあります。

 

【人口ボーナス期の定義】

●生産年齢人口が継続して増え、従属人口比率の低下が続く期間
●従属人口比率が低下し、かつ生産年齢人口が従属人口の2倍以上いる期間
●生産年齢人口が従属人口の2倍以上いる期間
※従属人口=若年人口(15歳未満)と老齢人口(65歳以上)の総数

 

翻って今後の日本について考えると、1960年から1990年くらいまで続いた高度経済成長が再来することは現実的に難しいといわざるをえません。大きな理由がまさにこの人口ボーナスと人口減少です。人口ボーナスとは、前述した通り総人口に占める労働力人口の割合のことです。かつての日本の高度経済成長期においては、日本にもこの人口ボーナスがあったのです。そして今後の日本はといえば、世界最速で超高齢化が進み、逆に労働力人口が減っていってしまうのです。

 

では、フィリピンの人口ボーナスはいつまで続くのでしょうか?

 

フィリピン株式市場が世界から注目されている一つの大きな要因は、この「人口ボーナス」による成長促進効果が世界でも最も長期間続くと予測されているからです。

 

フィリピン国民の現在の平均年齢は23歳と日本のそれの約半分で、綺麗なピラミッド型をしています。これは、よくフィリピンと比較されるベトナム、タイ、ミャンマー、マレーシア、カンボジアなどの国と比べても圧倒的に綺麗な形をしています。

 

1億人以上の人口のある国としてフィリピンとともに注目されるインドネシアよりも人口ボーナス継続機関は相当長く、またVIP(ベトナム、インドネシア、フィリピン)として比較されることの多いベトナムについては、中国などと同様すでに人口ボーナス期は終了し、少しづつ高齢化方向に進んでいるのです。

 

人口ボーナスが世界でも最長に続く要因としては、フィリピン人口の8割が人工中絶を禁じているカトリック教徒という宗教的な理由や、親世代を子世代、孫世代が経済的に支える大家族主義がベースにあり、子や孫が多いことを好む傾向によるものです。

 

そのため人口構成は長期間変わらず人口ボーナス期が長期化すると予測されているのです。ジェトロ(日本貿易振興機構)が2015年に出したレポートでは、フィリピンでは東南アジア諸国のなかでも最長の、2062年までの人口ボーナスが続くと述べられています。

 

この長期にわたる人口ボーナス期の継続は、長期の経済成長を下支えします。フィリピン経済の長期の成長を示した予測としては、世界ビッグファイブ会計事務所であるPwCグループが2017年に出したレポート『The World in 2050』では、購買力平価ベースで見た実質GDPで見て、フィリピン経済は、2050年に世界19位(28位から)になると予測されています

 

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